なぜガンバはマリノスを撃破できたのか。選手たちが明かした“スペシャル戦術”の全容

2020年02月23日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

キャンプから研磨してきた「狙い通りの2発」

開始6分、果敢なフォアチェックから敵のミスを誘い、倉田(10番)が冷静にねじ込む。G大阪にとっては願ってもない先制点だった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ第1節]横浜 1-2 G大阪/2月23日/日産ス

 決して完勝とは言えない。だが、単なる勝点3でもない。

 日産スタジアムで行なわれたJ1リーグ開幕戦で、ガンバ大阪は前半のうちに2点を奪って試合を優位に進め、怒涛の攻勢を仕掛ける横浜F・マリノスの追撃を1点に封じ込んだ。下馬評を覆す内容での2-1勝利。J1リーグ開幕戦での白星は実に9年ぶりである。

 宮本恒靖監督が採用したシステムは、3-5-2の予想に反して4-3-3だった。しかしながらあくまでこれはベースの形であり、戦況や局面に応じて臨機応変に変化した。鍵を握ったのは右サイドの守備だ。1ゴール・1アシストと気を吐いた背番号10、倉田秋はこう振り返る。

「去年のマリノス戦で、(左SBの)ティーラトン選手にカットインからミドルを決められた。マリノスの攻撃は強烈ですけど、あのサイドバックのところをまずケアしていこうと。だから守備のときは5-4-1で、攻撃になったら4-3-3や3-5-2とか、相手の出方を見定めながら(システムは)目まぐるしく変わってましたね」

 
 右SBのオ・ジェソクは「かなり変則的。マリノス戦限定です」と話す。元韓国代表によると、右サイドハーフの小野瀬康介がスイッチャーだったという。彼がどのエリアでプレスを仕掛けるかで、オ・ジェソクの位置取りが変わり、右CBか右SBかが決まった。「で、相手がハーフウェイラインを越えてきたら割り切って5バックで対応しようと話してましたね」と振り返る。

 かたや小野瀬は、「前から後ろまで動き回って相当な運動量が求められましたけど、個人的には5バックにならないようにと心掛けて、積極的に行きましたよ」と明かす。

 前半の2得点は、キャンプ中から取り組んできた狙いが結実した。昨季以上に連動性の高い前線でのフォアチェックを強化。開始6分、敵GK朴一圭にハイプレッシャーを掛けた矢島慎也がトラップミス誘発からボールを奪取し、倉田の先制点をお膳立て。さらに34分、「けっこう練習で繰り返してたパターン」(オ・ジェソク)で追加点を奪う。横浜がラインを押し上げた瞬間にGK東口順昭が裏へ蹴り込み、左サイドから抜け出した倉田が矢島のゴールをアシストした。まさにしてやったりの2発だ。

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