【名古屋】初の練習試合で見えた新たなスタイル。2年目の“フィッカデンティグランパス”が目指すサッカーは…

2020年01月25日 今井雄一朗

和田コーチの下でトレーニングも進む

タイキャンプでサムットプラカーン・シティFCと練習試合を行なった名古屋。新戦力の阿部らが出場した。写真:今井雄一朗

 タイでの一次キャンプで初の練習試合となったサムットプラカーン・シティFCとの一戦で、今季の名古屋の戦い方はその輪郭を明確にさせた。昨季の守備特化型のリトリートスタイルは「残留のためだけにやった」と強調するマッシモ・フィッカデンティ監督の考える2020年の戦い方は、ハイプレスとスピード感あふれる攻撃の両立である。

 元鹿島の石井正忠監督が指揮官を務め、同じく鹿島などで活躍したペドロ・ジュニオールが今季から所属するタイ1部の強豪を相手に、新生名古屋はその片鱗をしっかりと表現してみせた。

 豊富なサイドアタッカーを活かすべく選んだ4-2-3-1の布陣に並んだのは1トップに山崎凌吾(湘南から加入)、トップ下に阿部浩之(川崎から加入)、そしてボランチで米本拓司とコンビを組んだのが稲垣祥(広島から加入)と、期待の新戦力をふんだんに盛り込んだメンバーだった。

 左右のアタッカーにはマテウス(横浜からレンタルバック)と前田直輝をチョイス。運動量に質を加えられる強力なラインナップは、タイ特有の荒さと裏腹の激しさをも跳ね返し、前線での攻守の切り替えを可能にしていた。開始早々に山崎のチェイシングから阿部が決定機を迎えれば、マテウスのカットインから前田が惜しいシュートを放つなど、その幸先は非常に良かったと言っていい。ボランチふたりの出足も速く、また米本のアプローチの迫力を稲垣が周囲へのコーチングと自らのカバーリングでバランスを取る塩梅もかなり面白かった。
 試合は立ち上がりの攻勢から一転、空中戦での衝突で丸山祐市が負傷交代してしまい、33分にペドロ・ジュニオールの得点でサムットプラカーン・シティが先制。バックパスをカットされての失点には「何だあれはという失点もあった」と指揮官もやや不満げだったが、それ以上に5度はあった決定機をものにできなかった方が敗因としては大きかったか。

 途中、相手のあまりの荒さに苛立つ場面も見られたが、米本は「失点がなければ0-0の展開だったし、悪くはなかった」と話し、阿部も「失敗して普通だと思っているし、積み重ねだと思っている」と結果そのものに対してはネガティブに捉えていない様子。フィッカデンティ監督は「今日はキャンプ最初の試合として足が動くところまででいいから、まずはやらなくてはいけないサッカーをやろうと言った」と内容重視の試合だったとしており、「これでまだ走れたら困るくらい、今は練習で走り込みをやっている。最終的には90分間できるようになるし、今日20分間できたことは良い感覚を得ている」と一定以上の評価をしているようだった。

 トレーニングでは体力強化や戦術浸透のほか、新任の和田一朗コーチによるワンタッチコントロール、パスの精度を意識した練習も行なわれており、攻守に縦に速いスタイルを支える技術構築も積み上げられている。

 疲労はいったんピークに達しつつある選手たちはそれでも足を前に出して戦うなど、メンタルとしても成長は確かに見られてきた。今月28日まで続くタイでの一次キャンプ、そして同31日から始まる沖縄での2次キャンプを通して、チームがやるべきことはこの実戦を通してもまたはっきりしたところがある。活動量の多い、積極果敢なサッカーにスピード感と精度、強度を添え――。連日30度超えのタイ・チョンブリで、名古屋は着実な進化の道を走っている。

取材・文:今井雄一朗(フリーライター)

【名古屋 新体制PHOTO】スローガンはAll for NAGOYA ~進化~。阿部、稲垣、山﨑ら新加入選手も加わり名古屋"ファミリー"と共に優勝を目指す!!
 
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