【三浦泰年の情熱地泰】母校・静岡学園が日本一!魅惑のスタイルは勝利優先主義では辿り着けない

2020年01月15日 サッカーダイジェストWeb編集部

個人の技術を大事にするスタイルへのこだわり。個人、選手の成長が勝利に繋がるという発想

三浦ヤス・カズ兄弟の母校、静岡学園が24年ぶり2度目の選手権優勝。個人技をベースにした魅力的なスタイルが話題を呼んだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 母校、静岡学園が優勝した。

 その連絡をブラジル時間の早朝5時過ぎに確認した。前回のコラムで少し触れたが、僕が座右の銘にする「努力は必ず報われる」。報われた瞬間だ。

 静岡県勢(静岡県代表)がなかなか全国で勝てなくなってから、全国で通用するのは静岡学園だけだと言う人もいたが、卒業生の僕へのリップサービスなのか?

「そうなのかな!?」と思うなかで、長くブレないコンセプトでやってきている我が母校のスタイルを信じて「間違いない!」と思い5年ぶりの出場に期待していた。

 それもここまでの静岡県代表が1回戦も突破できなかった状況であったと聞いていたので、よくやってくれたと正直、素直に嬉しく、誇らしく、静岡学園サッカー部に感謝の気持ちでいっぱいだ!

 1回戦を突破した翌日の新聞に、弟の「カズ」の文字が載った時、「勢いよ付け!」と思ったものだが、高校生の持つモチベーションが決勝の最後までキープしていったとしたら、これもまた素晴らしい出来事でもあった。

 トレーニングでは、必ずドリブル、リフティングからスタートする個人の技術を大事にするスタイルへのこだわり。勝利より個人、選手の成長。成長とは、試合に勝つ前に個人個人が上手くなる、技術をつけること。メンタルが強くなる、戦えること。

 それが勝利へ繋がるという発想を持つ前監督の井田勝通氏(師)から受け継がれた哲学を、見事に教え子でもある川口修監督が継承している静岡学園のスタイルは違う。

「リズム、インテリジェンス、テクニック」
選手個の創造性を大事にし、コレクティブにボールを動かすサッカーは、ブラジルにいるため1試合も見れていない僕にも目に浮かぶ。

 現代サッカー。勝利至上主義、フィジカルの強い、速く、強く、大きい選手を並べて戦うサッカーとは違う、まさしく昔のブラジルだったのでは。

 昔のブラジルのサッカーも選手に求めるのは個人の創造性、人が驚くような意外性のあるプレーだった。それで勝利しなければ周りが許さなかった。

 ただ、昔はそれでもそうやって集まったセレソン(代表)選手で世界一になれた。勝てたのである。

 しかし、それが組織、守備の徹底、規律をしっかりと植え付けられたサッカーに勝てなくなってしまっている。

 あるブラジルの友人が言っていた。ブラジルも変わったと……。勝利するために選手へ求めることも、選手のセレクトも、だと。

 そして、勝利の意味合いもまた変わってきている。それは、試合に勝つよりも高く「売る」という"クラブの勝利"が優先になっていると。

 また、静岡学園の優勝と同時に、女子も静岡代表の藤枝順心が優勝し、静岡県のサッカー関係者も喜んでいると聞いた。

 静岡県のサッカー名門校のOBは、静岡学園のみならずどのチームの人間も我が高校のサッカーを誇りに想い、愛している。

 これが静岡なのである。そして、永遠のライバルであり、同志なのである。が、サッカー王国と呼ばれ続けてきた静岡は、これで完全に"王国"を取り返したことになるのであろうか?
 

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