「ブーイングの夜、クボを逃がした重大さを知った」久保建英の前半戦をバルサ番記者はどう評価したのか?【現地発】

2020年01月09日 ファン・ヒメネス(スペイン『AS』紙記者)

正真正銘のプリメーラの選手に

12月のバルサ戦で先発した久保。古巣を相手に存在感を放った。(C) Rafa HUERTA

 バルセロナは久保建英の動向を詳細に観察し続けている。その理由は日本の皆さんに長々と説明するまでもないだろう。

 元はといえばバルサのカンテラでプレーしていた久保は、FIFAによる制裁が原因で退団を余儀なくされた。そして復帰できる年齢に達した時に、バルサはみすみす再獲得のチャンスを逃し、その将来のホープは宿敵レアル・マドリーに移籍することになったのだ。

 バルセロニスタの間では、この一連の決断を大きな過失と捉える向きも少なくなく、マジョルカで活躍を見せている事実が不満をさらに蓄積させる格好となっている。実際、ここまでの久保のプレーぶりは、色眼鏡なしに見ても見事の一言だ。

 ビセンテ・モレーノ監督が植え付けた組織重視のマジョルカのスタイルに数か月の間に適応。開幕当初のスーパーサブ的な立ち位置だったが、結果を出すことで先発出場が増加した。いまやすっかり定位置に定着した感がある。18歳ながら、正真正銘のプリメーラ(1部)の選手になったと言っていいだろう。

 マジョルカの関係者によれば、久保はそうした戦術面だけでなくチームにも素早い適応を見せたという。謙虚さ、向上心、協調性を持ち合わせた好青年。流暢なスペイン語を武器にベテラン選手を中心にすっかり気に入られ、時に冗談を口にしてふざけ合うこともあるという。

 若いながらプロ意識も高く、周辺がゴルフ場に囲まれ、スティーブ・マクマナマン(元リバプール、マドリーなど)やサミュエル・エトー(元マジョルカ、バルサなど)も別荘を所有するソン・ビラという閑静な住宅地で母親と暮らしながら、フットボール一色の生活を送っている。
 
 バルサのファンが久保に対して抱く複雑な感情が浮き彫りになったのが、マジョルカがカンプ・ノウに乗り込んだ試合でスタジアムに飛び交ったブーイングだった。それはスペインに復帰するに当たり、バルサではなくマドリーを選んだことに対する不満の表れに他ならない。

 しかし久保はそんな周囲の反応などどこ吹く風と言わんばかりに積極的にボールを要求し、堂々としたプレーを披露。リオネル・メッシにまた抜きを決めたプレーは彼の強いパーソナリティーを象徴していた。バルサのファンの全員が、久保を巡る移籍騒動の顛末を知っているわけではないが、この夜、カンプ・ノウの観客の多くは、クラブが犯した重大な過失を改めて認識するに至ったのだ。

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