日大藤沢の左サイドが必見! 1500m・4分17秒の“超ダイナモ”が異彩を放つ【選手権】

2020年01月03日 川原 崇(高校サッカーダイジェスト)

「手綱を握っててもゴール前まで行ってしまう」と指揮官

「全国制覇しか頭にない」と話す吉本。3回戦の仙台育英戦もその強烈な左足に注目だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 桜色の精鋭軍団をベスト16へ導いたのは、左サイドのダイナモだった。

 1月2日に行なわれた全国高校サッカー選手権2回戦、日大藤沢(神奈川)vs広島皆実(広島)の一戦だ。前半14分に成定真生也のゴールで先制した日大藤沢は、同20分に追加点を挙げる。起点となったのは左SBの吉本武(3年)。エリア内の平田直輝にクサビを打ち込むと、ゴールの嗅覚を働かせる。その長身FWが放ったシュートのこぼれ球に鋭く反応し、ストライカー然と相手GKを軽やかに交わしてゴールに蹴り込んだ。

 さらに、1点を返されて2-1で迎えた後半30分。左サイドを颯爽と抜け出した吉本は、山なりのドライブクロスを中央へ供給する。これがファーサイドで待ち受けた平田の頭をドンピシャで捕らえ、貴重な3点目をもたらした。1ゴール・1アシストで鮮烈なインパクトを与えたのだ。

 それもそのはず。もともとは攻撃的なポジションで活躍したレフティーで、チームが昨年から攻撃的な4-3-2-1システムを新たに導入したのに伴い、サイドバックにコンバートされた。佐藤輝勝監督は「攻撃は水を得た魚のごとくです。ウチは良いところを伸ばすことで、苦手を消す。ただ吉本の場合は手綱を握っててもゴール前まで行ってしまいますね」と言って笑う。

 吉本本人も持ち味は攻撃性能だと自負する。以前は元ドイツ代表のフィリップ・ラームを参考にしろと言われたが、「個人的にはロバートソンがしっくり来ます」と語る。欧州王者にして世界王者のリバプールで不動の左SBとして鳴らすスコットランド代表、アンドリュー・ロバートソンが理想モデルだ。積極果敢に攻撃に関与し、高質なクロスとフィニッシュワークで絶えずチャンスに絡むスーパーSBである。

 指揮官の信頼も厚い。決定的な3点目を振り返った佐藤監督は、「(吉本が)抜け出した時点で決まるなという予感がありました。練習通りでしたから」と称えた。吉本も「県予選2回戦でも決めた形。キックは持ち味なのでこれから見てほしいところです」と胸を張る。

 
 驚異的なのはそのスプリント力と持久力。本人いわく「チームでは一番だと思います」とのことで、「1500メートルは4分17秒で走りますし、昔からマラソン大会とかで負けたことがないんで(笑)」と話す。「目標はもちろん日本一ですし、狙える力はあると思います。選手権は初めてなんですけど、やっぱり楽しい。小学校の頃からずっと日藤に憧れていた。いまは僕が、ああいう選手になりたいと子どもたちに思ってもらえるような存在になりたい」と、照れくさそうに明かした。

 3回戦の相手は仙台育英(宮城)だ。大応援団の歓声を受け、チームを5年ぶりの8強へ導けるか。成定、吉本、そして植村洋斗が奏でる日大藤沢の強烈な左サイドアタックが、ふたたび等々力で猛威を振るう。

取材・文●川原崇(高校サッカーダイジェスト編集長)

【選手権PHOTO】日大藤沢3-1広島皆実|果敢に攻め立て3発快勝!日大藤沢が2回戦突破!
 
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