【神戸】絶対に優勝したい――飯倉大樹を奮い立たせた古巣サポからの熱きメッセージ

2020年01月02日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「俺は全然、戦いたくないんだけどね(笑)」

鹿島との決勝戦は2-0の完封勝利。後半は攻め込まれる時間が増えたが、集中力あるプレーでゴールを死守した。金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[天皇杯決勝]神戸2-0鹿島/1月1日/国立

 布団に入って、さあ寝ようとしてから、30分は寝付けなかったという。

 タイトルがかかる決勝戦を前に、ヴィッセル神戸の守護神・飯倉大樹は少なからず緊張していたのかもしれない。ただ、そんな時間もポジティブに受け止める。「逆に楽しもうと思って。ワクワク、ドキドキしようと思って」。この特別な緊張感を存分に楽しんだ。「そうしたら、寝落ちしていた(笑)」。

 所属する神戸にとって、クラブ史上初のタイトルがかかる決勝戦だ。すでに引退を表明しているチームメイトのダビド・ビジャや那須大亮の花道を飾るためにも、新国立のこけら落としという最高の舞台で、歓喜の瞬間を迎えたい。様々な理由を挙げては「絶対に落とせない」と気持ちを高ぶらせていた。

 自らを奮い立たせるものは、他にもあった。古巣の横浜F・マリノスのファンやサポーターからのメッセージだ。

「いろんなサポーターの方が、『優勝してください』って。嬉しいことに、去年とかも含めて、F・マリノスの優勝に貢献してくれたから『タイトルを獲ってほしい』とか」

 2019年シーズンのJ1リーグは、横浜の15年ぶり4度目の優勝で幕を閉じた。就任2年目のアンジェ・ポステコグルー監督の下、『アタッキング・フットボール』を掲げ、圧倒的な攻撃力で頂点に立った。

 今季の途中に横浜から神戸に新天地を求めた飯倉は、トリコロールの一員だった時は、アグレッシブな守備でチームの攻撃面をサポートしていた。ハイラインの背後にできる広大なスペースを埋めるために、勇気を持ってペナルティエリアを飛び出し、ピンチを潰す。持ち前の足もとの上手さで、最後尾からビルドアップを支えた。なによりも、飯倉自身がこのサッカーに大きな可能性を感じていた。
 
 間違いなく、横浜が久々のリーグ制覇を成し遂げるためには不可欠な存在だった。残念ながら、"当事者"として銀色に輝くシャーレを手にすることはできなかったが、横浜が優勝という結果を果たしたからこそ、自分も負けたくなかった。神戸のために、という想いはもちろん、一フットボーラーとしての意地もプライドもある。心底、優勝したいと思った。

『ゼロックスで戦いたいんで、頑張ってください!』

 そんな激励の言葉も届いた。飯倉本人は「俺は全然、戦いたくないんだけどね(笑)。だって、強いんだもん」と顔をほころばせる。

 それが本心かどうかは分からない。ただ、シーズン前にリーグ王者と天皇杯覇者が相まみえる恒例のゼロックス・スーパーカップの前日、飯倉はきっと、また布団の中で悶々としているのだろう。古巣との対決に、ワクワク、ドキドキしながら。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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