【天皇杯決勝】西大伍が忘れなかった古巣へのリスペクト。「鹿島でいろんな経験をさせてもらったから」

2020年01月01日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「こういう舞台でプレーできているのは…」

38分には見事なクロスから藤本のゴールをお膳立て。西の技巧が光った。写真:サッカーダイジェスト

[天皇杯決勝]神戸2-0鹿島/1月1日/国立

 神戸が2-0で鹿島を下した天皇杯決勝でボランチの山口とともに良い仕事をしていたのが、右ウイングバックの西だった。3-4-2-1システムで臨んだ神戸が前半から鹿島を押し込めた要因のひとつが、左の酒井を含むウイングバックの質の高い動きだった。

 比較的高い位置で多方向にボールを散らし、鹿島に守りの的を絞らせない。地味ながらもちょっとした動作で神戸のボール回しに大きく貢献していたのが西だった。実際、彼は「相手の嫌がる位置にいようとした」。

「4バックで僕らのフォーメーション(3-4-2-1)を相手にするのは難しい。どっかで割り切って引くという選択肢も必要だけど、鹿島はスライドでどうにかしようとしていて、それがうちにとっては良かった」

 そんな西のハイライトは38分。藤本のゴールにつながった最高級のクロスだろう。インフロント気味のキックで相手GKが嫌がるコースに蹴り込んだボールは、パーフェクトに映った。本人に言わせれば「DFにクリアされてもおかしくなかった」が、とはいえ、誰かに当たれば何かが起きるのではないかというクロスでもあった。

「藤本の得意な形を考えた時にああいうボールになった。そういう場所にクロスを上げたいとは思っていました」
 
 ひとつ確かなのは意図的に蹴ったクロスということだろう。ゴールへのイメージができているからこそ、ああいうボールが蹴れると、そう結論付けてもいいのではないか。

 戦術的なインテリジェンスを感じさせたのは42分。センターライン付近で鹿島のセルジーニョがドリブルで突破を試みようとした時、西はカウンターを防ぐためにわざと身体をぶつけてその流れを断ち切った。そこで一旦プレーが止まったことで、神戸が守備陣形を立て直せたのは言うまでもない。

 神戸を優勝に導く立役者のひとりになった西だが、試合後のミックスゾーンではしゃいだ姿を見せているわけではない。コメントの最後のほうで口にしたのは古巣・鹿島へのリスペクトだった。

「僕がこうやってこういう舞台でプレーできているのは鹿島でいろんな経験をさせてもらったから」

 そう言って笑顔を浮かべた西の表情にはある種の満足感が感じ取れた。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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