「トミーは日本人のイメージを覆した」冨安健洋はなぜボローニャで絶大な信頼を勝ち取れたのか? イタリア人記者が明かす【現地発】

2019年12月29日 パオロ・フォルコリン

“壊れた”状態でボローニャに帰って来た

ミラン戦ではミスも犯したが、冨安の評価が下がることはない。(C)Getty Images

 スポーツ紙は試合前日に予想スタメンと控えの選手のリストを載せる。それは世界どこでも共通だろう。

 イタリアではそれに加えて"バロタッジョ"という欄がある。決勝投票のような意味だが、この場合はスタメンになる可能性とでも言おうか。誰がプレーするか明言できない時、この欄にそれぞれの可能性をパーセンテージで示すのだ。例えばユベントスだったらクリスティアーノ・ロナウドの横でプレーするのは「ディバラ55%、イグアイン45%」といった具合だ。

 しかし、冨安健洋は一度もこの欄に名前が載ったことがない。なぜなら彼はボローニャに来て以来、不動のスタメンだからだ。練習に打ち込む真摯な姿と、ピッチでのパフォーマンスで、瞬く間に右SBのポジションを自分のものにしてしまった。
 
 しかし"トミー"のシーズン前半が、すべてバラ色だったかと言えばそうではない。10月半ばの代表戦に招集されると、モンゴル戦で左足ハムストリングの肉離れを起こし、 "壊れた"状態でボローニャに帰って来たのだ。

 シニシャ・ミハイロビッチ監督のサッカーに欠かせない存在となりつつあった冨安にとっては、思いがけない災難だった。それからの1か月は怪我の治療に専念することになったが、そこも日本人らしく、退屈なリハビリも真面目に熱心に取り組くんだ。

 チームがこの日本代表DFのリハビリを任せたのが、ボローニャにあるアイソキネティクセンターだ。かつて膝を故障したロベルト・バッジョをたったの76日という記録的なスピードで復活させたことでも有名な病院である。ここのスタッフが総力あげ冨安をケアし、メンタル面でも励ました。おかげで約1か月後にはピッチに戻れるようになったのである。

 復活した冨安は、またレギュラーの座に戻り、"一歩先を読んだ、スピーディーなプレー"という持ち味を存分に発揮してくれている。

 彼はイタリア人がイメージする背が小さくてちょこまかしている典型的な日本人とは、大きくかけ離れている。身長190センチで筋骨隆々、それでいて瞬発力やスピードを持ち併せている。

 チームにも良く溶け込んでいて、とりわけGKのウカシュ・スコルプスキとは仲が良く、この友情はディフェンスの連携プレーに大きなプラスとなっている。

「互いの目を見れば、何をしようとしているのかはすぐわかるよ」

 ポーランド代表の守護神はそう話す。

「1000の言葉より、1回の視線のほうが雄弁だ。トミーはいつも準備万端で頭がいい。一緒にプレーするのは楽しいよ」

【動画】ピンポイントクロス炸裂!冨安健洋のセリエA初アシストはこちら

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