“弱すぎる”香港から得た「教訓」を韓国戦で活かせるか【小宮良之の日本サッカー兵法書】

2019年12月18日 小宮良之

クローズアップされたのは、中国代表選手のラフプレー

格下の香港に5発を浴びせたとはいえ、課題は少なくなかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 E-1選手権、香港との戦いは、「教訓」とすべきものだった。

 香港は5-4-1という守備的な布陣で、格上の日本の戦いをどうにか封じようとしていた。リトリートしながら、スペースを消し、自由を与えない。どこかでボールを引っかけ、両ワイド、シャドーが飛び出し、1トップが一縷の望みをつなぐような攻めに出る構えだった。

 しかし香港は引いたのではなく、腰まで引けてしまった。前線からのプレスが全くないことで、ひたすら攻撃を浴び続けた。相手に余裕を与えてしまい、「落城」は必然だった。

 前半だけで、4失点を喫した。

 香港はずるずると引くべきではなかった。プレスをかけることによって、若い選手の多い日本に対し、十分にミスを誘えただろう。臆したように"こもった"ことで、勢いを与えてしまった。簡単にラインを越えられ、中盤の選手に悠々とサイドに展開されている。サイドで1対1の状況を作られ、わきから陣形を抉られ、崩壊していったのだ。

 とりわけ、相馬勇紀のドリブルに手を焼いていた。単純なスピード、スキルに後手を踏んだ。局面で常に敗れることで、他も連鎖して敗れ、雪崩を打って失点の機会を与えている。その姿は、あまりにむごかった。
 
 しかし後半に入ると、さすがに香港はいくらかプレー強度を上げ、それだけで押し込まれなくなった。日本が得点差で手を緩めたのはあっただろうが、攻撃の活路さえ見出している。

 そして55分過ぎだった。GKが蹴ったパントキックに、前線のサンドロがポストプレー。日本のセンターバック、田中駿汰のファウルを誘っている。ポジション争いで勝ち、引き倒されており、"してやったり"だった。

 これで得たFK、クロスをゴール前に送ると、GK大迫敬介がふらふらと飛び出し、ボールをキャッチすることもはじき出すこともできず、中途半端にペナルティーエリアの少し外にこぼしてしまう。香港の選手はペナルティアークでこれを拾い、遅れて飛び込んできた大島僚太をワンフェイントでかわし、左足でシュートを打ったが、バーをかすめて外れた。

 一連のプレー、もしも香港が強豪国だったら、確実に得点していただろう。

 この瞬間、日本はいくつものミスを重ねていた。まず、軽率なマーキングからのファウルがあった。そしてGKの不用意な飛び出しと中途半端なプレー。極めつけは、戦術的な原則違反だった。守備のセットプレー、ペナルティアークにポジションを取った選手は、一連のプレーが切れるまでミドルシュートに対して控えるべきだが、取るべきポジションを失っていた。

 香港はあまりに弱かった。日本がミスをしても、それを浮き彫りにはできない。目を覆うバックパスや横パスのミスも、彼らには恩恵をもたらすものではなかった。

 結果、日本は5-0で大勝している。

 しかし、このような類の勝利からは、教訓こそ大事に生かすべきだろう。そこから何かを学び取れていたか――。それは、大会優勝が懸かった最後の韓国戦で明らかになるのかもしれない。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月には『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たした。
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事