1月1日の移籍市場再開を前に! 欧州メガクラブの「強化部門」実力診断|アーセナル編

2014年12月27日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

信じられないほどのリスペクトを集めている。

クラブ全体の強化を取り仕切る最高責任者としての「マネジャー」の第一人者は、間違いなくヴェンゲル(左)だ。 (C) Getty Images

 欧州の移籍マーケットが1月1日に再オープンする。
 
 補強の構想を描き、ターゲットを絞り込み、交渉を進め、移籍オペレーションをまとめ上げるのが、各クラブの「強化部門」だ。いわばフットボールクラブの命運を握る重要なその強化部門、では、どのクラブのそれが優れているのか?
 
 当サイトの連載コラムでもお馴染み、移籍市場を専門にカバーする記者で、各クラブの事情に通じるジャンルカ・ディ・マルツィオ記者が、メガクラブの「強化部門」を診断した!
 
※ワールドサッカーダイジェスト2014.12.18号より
 
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 イングランド国内はもちろん、欧州や南米においてもクラブ、選手、エージェントから信じられないほどのリスペクトを集めている。
 
 ピッチ上の結果が見合ったものではないのは事実だが、それは予算的な制約、そして目先の結果よりも中・長期的なビジョンを優先する明確な哲学があるから。選手の獲得、放出いずれにおいても、一つひとつが技術・戦術的にも予算的にもきわめて筋が通った論理に支えられている。
 
 的確なスカウティング・評価眼と先を見据えた計画性に基づく補強戦略は、目先の結果に振り回され、あるいはマーケティングに惑わされている他のクラブと比べて、明らかに一日の長がある。
 
 強化を取り仕切っているのは、もちろんヴェンゲル監督。エージェントとの交渉も指揮官が直接行なうケースがほとんどだ。ワールドカップ期間中もリオ郊外のホテルに拠点を構え、エージェントや他のクラブ首脳と「商談」を進めていた。
 
 ファーガソンが第一線を退いたいま、トップチームの監督だけでなく、クラブ全体の強化を取り仕切る最高責任者としての「マネジャー」の第一人者は、間違いなくヴェンゲルだ。
 
 弱みがあるとすれば、先を見据えて若手の獲得や抜擢を重視するがゆえに、目先の結果を徹底して追求できない点か。しかしこれは、戦力強化とクラブ経営がそもそも相反する性質を持ったテーマであり、アーセナルが「クラブ経営優先」の哲学を明確に掲げている以上、あえて弱みと言えるものではない。
 
 タイトル獲得は難しいにしても、コンスタントにチャンピオンズ・リーグの舞台で主役を演じ続けているのは確かであり、それは今後10年経っても変わらないだろう。
 
【判定】(とても優秀)
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
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