クラブを強くするために地域の子どもたちを育てる──。札幌に見る「新しいスポンサードの形」

2019年11月18日 吉田治良

企業としてではなく、個人としてサポート

Jリーグ第30節の名古屋戦に招待された4人の子どもたちが、試合後に福森選手と記念撮影。夢のような時間を過ごした。写真:サッカーダイジェスト

 ルヴァンカップ決勝の激闘の余韻が、埼玉スタジアムからおよそ1,000㎞離れたこの北の大地にまで、風に乗って運び込まれたかのようだった。

 延長PK戦の末、川崎フロンターレにクラブ史上初タイトルの夢を打ち砕かれてからちょうど1週間後の11月2日、北海道コンサドーレ札幌(以下コンサドーレ)は本拠地・札幌ドームに名古屋グランパスを迎えていた。

 入場する選手たちに、スタンドを埋めた19,943人の観衆から温かい拍手が降り注ぐ。多くのサポーターの胸中を占めていたのは、悔しさよりも誇り──。あと一歩のところでルヴァンカップ優勝を逃した悔しさを、Jリーグ王者・川崎を向こうに回し、大会史上に残る壮絶なバトルを演じたチームに対する誇りが、はるかに上回っていた。

 それは、紛れもなく未来につながる敗戦だった。

 こうした経験が、クラブにとってかけがえのない財産になることは、他でもない、"シルバーコレクター"と揶揄された苦難の時代を経て、いまやJリーグ屈指の強豪となった川崎が証明してくれているだろう。

 名将ミハイロ・ペトロヴィッチを招聘した昨季は4位に大躍進し、2年目の今季も上位に踏み止まるチームは、確実に地力をつけ、タイトルに近づいている。

 ただし、明るい未来を作り上げるのは、ピッチ上で戦う選手やクラブ関係者だけではない。地元・札幌の人たち、そして北海道全体のバックアップがなければ、コンサドーレが真の強豪クラブとなるのは、やはり難しいのだ。

「コンサドーレを強くすることで、札幌の街を、ひいては北海道全体を活性化したい」

 そう語るのは、人工知覚技術の研究開発及びソフトウェアライセンスの提供を行なう企業の取締役社長、井上瑞樹さんだ。

 札幌出身の投資家である井上氏は、中学校時代の同級生で、現在は同じ会社で取締役を務める飯塚健さんとともに、「企業」としてではなく、あくまでも「個人」としてコンサドーレをサポートしている。

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