ラグビーW杯優勝に触発されたチームが炙り出してくれた「なでしこジャパン」の現在地

2019年11月11日 西森彰

収穫は、飛び道具での得点と、スクランブル時の保険成約

攻撃の起点となった岩渕。東京五輪でも前線の軸となる存在だ。写真:早草紀子

 11月10日(日)、北九州スタジアムで、なでしこジャパンの新ユニホームお披露目試合となる、MS&ADカップ2019 南アフリカ女子代表戦が行なわれた。先月のカナダ戦で素晴らしいリスタートを切ったなでしこジャパンとしては、ここをしっかりとした内容で勝利し、12月に控えるE-1選手権へつなげたいところ。


 対戦相手の南アフリカ女子代表は、今夏フランスで開催された女子ワールドカップに初出場。スペインを苦しめるなど健闘が目をひいたが、先日行なわれたオリンピック予選では、まさかの早期敗退を喫した。

 デジリー・エリス監督によれば、親善試合と公式戦、そしてそれに伴う短期合宿でチームを仕上げるやり方らしく、2か月開いた試合間隔とモチベーションが心配された。だが「ラグビー代表が国に勇気を与えてくれた。いずれは女子サッカーでも」(リエフィレ・ジェーン、南アフリカ女子代表)という想いは本物で、最後までしっかりと集中を切らさず、プレーしてくれた。

 これが、なでしこジャパンの収穫と課題を浮き彫りにしてくれた。

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 まず、収穫という点では、攻守両面で練習を重ねていたというセットプレーで奪った20分の先制点だ。中島依美(INAC神戸レオネッサ)の左コーナーキックに、まず土光真代(日テレ・ベレーザ)が飛び込み、次いで熊谷紗希(オリンピック・リヨン)が、このこぼれ球を押し込んだ。

 これが代表110試合目の出場で、なんと初得点。チームメイトにも「いつもネタにされていた」(熊谷)。これは、女子ワールドカップでも大きなクロスやセットプレーから失点していた南アフリカの弱点を突いたものだが、攻めあぐんだ状態での打開策として極めて有効だと再認識できた。

 次に、普段と違うポジションでプレーした選手が、それぞれ大過なくプレーし、選手枠が少ないオリンピックで起こり得るスクランブルへの保険がかかったという点だ。ボランチで出た宮川麻都(日テレ・ベレーザ)がコンビを組んだのは三浦成美(日テレ・ベレーザ)で、左サイドバックで出た遠藤純(日テレ・ベレーザ)も、タテ関係は長谷川唯(日テレ・ベレーザ)。最低限のコンビネーションは担保されていたが、ふたりとも及第点の出来を見せた。

 ユーティリティーがウリの宮川はともかく、これまで攻撃的ポジションでプレーしていた遠藤は手探りに近い状態。熊谷の指揮する最終ラインの上下動についていきながら、長谷川の位置取りにも気を遣った。「実際にやってみて、守備に特化というよりは攻撃に力を入れて、長谷川選手のポジションを見ながら、自分のポジショニングや動きを変えられていたので、そのあたりは、良かったかなと思います」(遠藤)

 もちろん、遠藤を4枚目のディフェンダーというよりは攻撃の駒と考える高倉監督からすれば、もう少し決定的な仕事に関わることを期待していただろうが、慣らし運転としては上々。今後へ一定の目途が立ったのではないだろうか。

次ページ課題は、引いた相手の攻略と、勝負どころでのギアアップ

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