［ルヴァンカップ決勝］札幌３（４ＰＫ５）３川崎／10月26日（土）／埼玉スタジアム2002　

　大一番を前に川崎の選手たちの想いは共通していた。

　０-２で敗れた２年前のC大阪との決勝の雪辱、そして決勝で過去４度も涙を流してきた負の歴史の終止符――確かにその気持ちも強かったはずだ。もっとも、選手、監督の口をよりついたのは、常勝クラブへの新たな一歩を踏み出したいとの言葉だった。

「フロンターレというチームが成長していく上で必要なタイトルだと思っている。ずっと苦しんできた一発勝負で勝つことができれば、自信を手にできるはず」（鬼木達監督）

「フロンターレとして毎年、ひとつタイトルを獲っていきたいという想いがある。それができれば、毎年なにかしらかで優勝争いをできるチームになっていくと思う」（中村憲剛）

「常にタイトルを狙えるチームにならないといけない。目の前にそういうチャンスがきているので、カップ戦でも勝てるというところを証明したい」（谷口彰悟）

　決勝戦は"川崎らしい"と評せば良いのか、ジェットコースターのような展開だった。小林悠と中村をベンチに温存して臨んだ前半は、10分にカウンターから失点。それでもアディショナルタイムに阿部浩之のゴールで同点に追いつくと、後半は中村と小林を投入して勝負に出る。そして88分には小林のゴールで逆転に成功した。

　だが、ここで試合を締めることはできず。ラストワンプレーとなったCKで同点に追い付かれると延長戦では相手の決定機を阻止したとしてVAR判定で谷口彰悟が退場。そのFKを直接決められて、10人で１点のビハインドを負った。それでも109分に小林の２点目で追い付き、PK戦では新井章太が相手２人のシュートをセーブする活躍で、大会初制覇を果たした。

　かつてシルバーコレクターとも揶揄されていたチームは、この２年のリーグ連覇に続いて３年連続でのタイトル獲得。新たな自信を手にできたと捉えられる。

　決勝にはユース育ちの田中碧、脇坂泰斗が先発し、高卒者、大卒者を含めればスターティングメンバーの半数はプロ１年目から育ててきた選手たちだ。さらに中村、小林というクラブと苦楽をともにしてきた選手も多く、MVPに選ばれた新井も所属７年目を迎える苦労人。

　今季のリーグ戦のようにやや安定感を欠くのは、川崎ならではと言えるのかもしれないが、チーム編成を含め、評価されるべき強化を行なっている。鹿島らライバルとはまた一味違った常勝クラブへの道を歩んでいると言えるのではないか。川崎独自の進化の先にはどんな未来が待っているのか楽しみだ。

取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）

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