男子トップも成し得ていないクラブ史上初の1部昇格へ…愛媛FCレディースが大切にする、ずっと変わらないもの

2019年10月10日 江刺伯洋

「とうちゃん、かあちゃん今日も見ててね!」

なでしこリーグ2部15節を終え、単独首位の愛媛FCレディース。残り3節で、クラブ史上初の1部昇格を叶えることはできるか。(C)愛媛FC

「背番号3、愛媛に尽くすオシャレ番長!向谷綾香~」
「背番号4、とうちゃん、かあちゃん今日も見ててね!愛媛のダイナモ活躍します、鎌田蘭~」

 2019プレナスなでしこリーグ2部、愛媛FCレディースと大和シルフィードの第15節。

 いつもと違う選手紹介に愛媛県総合運動公園球技場に集った426人のファンから笑い声が漏れる。観客席に設けた放送席から場内マイクで〝オリジナルコール〟をするのは怪我で出られない横山亜依選手だ。また公式記録やマスコミ受付などを担当する運営スタッフもほとんどがメンバー外や下部組織の選手たち。試合前も選手とファンが気軽に会話をするなど、ここにはJリーグとは違う手作りムードが漂う。

 前期終盤に首位に立った愛媛FCレディースは好調をキープし愛媛史上初の1部昇格までカウントダウンとなっていた(1位自動昇格、2位入替戦)。

「レディースには教え子も多いのでよく見に行ってます。昇格しそうなのでメチャクチャ気になりますね!」

 現男子トップチームを率いる川井健太監督は元愛媛FCレディースの監督だ。さらにIPU環太平洋大学短期大学(旧愛媛女子短期大学)サッカー部の監督も歴任していたので、今のチームには川井監督の教え子たちが多い。

 J2リーグを戦う男子トップは先日、京都と引き分け、勝点を39とし残留のめどが立ち一安心。一方、女子はここから大きな佳境を迎えていた。

 愛媛FCレディースは2011年に立ち上がり、初代・江後賢一監督(元愛媛FC選手)で四国リーグ、チャレンジリーグを経てなでしこリーグ2部に昇格。

 愛媛FCはそれ以前の2009年から愛媛女子短期大学と提携を結び女子サッカー部を創設。初代監督に元トップチームの選手だった川井監督を就任させ地元で選手を育成しレディースチームに送り続けていた。そして2015年から川井監督が愛媛FCレディース2代目監督を3年間務めた。

 つまり今の愛媛FCレディースの礎を築いたのは川井監督だと言っても過言ではない。「当時は(川井)監督がハイエースを運転して松山や県外まで試合しに行って、大学のある宇和島まで何時間もかけて帰ってました。途中積雪で山中に何時間も閉じ込められたこともありました(笑)」在籍8年目、現レディース主将の阿久根真奈(IPU出身)が懐かしそうに振り返る。

次ページ活動を初めて約10年。大きく変化したけれどずっと変わらないものがある…

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