悲劇の焼身自殺から1か月。イランで女性のサッカー観戦が初めて認められ、チケットが数分で完売!

2019年10月05日 サッカーダイジェストWeb編集部

FIFAの再三の求めに応じ、イラン当局が重い腰を

パブリックビューイングへの出入りは認められていたが、ついにスタジアムでのライブ観戦も解禁に。イランの女性サッカーファンが待ち望んだ瞬間だ。(C)Getty Images

 FIFA(国際サッカー連盟)の要請を受けて、イラン当局がついに動いた。

 現地時間の金曜日朝、イラン・サッカー協会はとあるゲームのチケット販売を解禁した。10月10日に首都テヘランで行なわれるカタール・ワールドカップ・アジア2次予選、カンボジア戦の入場券だ。会場となるアザディ・スタジアムの収容人員は7万8000。このうち3500枚が初めて、女性ファンに向けて販売されたのである。

 イランの国営通信社『ISNA』によると、チケットは発売開始からわずか数分で完売。イラン協会は混乱を避けるため、女性への販売に関する公式発表をしていなかったが、SNSを中心に情報が拡散され、爆発的なスピードで売り上げたという。どれだけ待望されていたかが窺い知れる。

 1979年に起こったイラン革命以降、イランの女性はサッカーのみならず、スタジアムでのスポーツ観戦を禁じられてきた。そんななか今年9月上旬、悲劇が起きる。国内リーグの試合を男装して観戦し、逮捕・拘束されていたサハル・ホダヤリさんが、裁判が休廷となったタイミングでガソリンを頭からかぶって、みずから命を絶ったのだ。不当な逮捕への抗議の自殺と見られている。6月の親善試合、イラン対シリア戦では、スタジアムに入場しようとした数十名の女性ファンが一斉検挙される事件もあった。

 
 一連の出来事を受けて、FIFAはイラン当局に改善要求のメッセージを繰り返し送ってきた。記憶に新しいのは、先の『FIFA年間アワード』だろう。ジャンニ・インファンティーノ会長と女子MVPのミーガン・ラピノー(アメリカ)が壇上スピーチで熱いメッセージを発し、スタジアムからの差別撤廃を世界に訴えかけた。

 民間団体などを含めたこうしたアクションが奏功し、イラン当局がようやく重い腰を上げたのだ。FIFAは当初女性ファンに対して4600枚のチケット販売を申し出たが、イラン国内には反発する勢力も根強くあるため、当局は女性たちの安全性を考慮し、今回は3500枚にとどめたという。FIFAは段階的にすべてのゲームで無制限に開放するよう、今後もイラン側に求めていくようだ。

 いずれにせよ、事態は急展開を見せた。イラン・サッカー界にとって10月10日のカンボジア戦は、歴史的な一日となるだろう。そのアウェーチームを率いるのはもちろん、元日本代表MFの本田圭佑監督である。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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