【昇格プレーオフドキュメント】「良いところばかり」の快勝劇――2013年・徳島

2014年12月06日 週刊サッカーダイジェスト編集部

粘り強い守備で京都の攻勢を凌ぐと――。

フリーで決めた千代反田の先制点は、緻密なスカウティングの結実だった。 (C) SOCCER DIGEST

 12月7日に千葉と山形が決勝を戦うJ1昇格プレーオフ。過去2年は大分と徳島がそれぞれ激闘を制し、J1への最後の切符を手にした。
 
 熾烈を極め、ドラマに満ちたこのラストバトルを『週刊サッカーダイジェスト』のアーカイブから振り返る当企画。
 
 12年の大分の歓喜に続いて振り返るのは、四国勢として初のJ1昇格を成し遂げた徳島の戦いぶりだ。2-0の快勝で悲願を成就させた決勝のレポートを、当時の興奮とともに――。
 
※週刊サッカーダイジェスト2013年12月17日号より
 
【SD写真館】J1昇格プレーオフ――激闘の記憶
 
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 徳島が歓喜か絶望しかないタフな一戦を制し、四国勢初のJ1昇格を果たした。一時は20位にまで低迷しながら、そこから這い上がっての悲願達成。この大一番は、そんな徳島の2013年を物語るような試合展開だった。
 
 序盤から徳島は、チャンスと見るやゴール前に幾人も飛び込んでくる京都の攻撃に圧され、防戦一方となる。だが千代反田と橋内のCBコンビを中心とする粘り強い守備で凌ぎ、反撃の糸口を探った。
 
 39分、この試合2本目のCKだった。徳島はスカウティングで〈京都はセットプレーでマークを外すことが多い〉という癖を見つけていた。アレックスのキックが放たれると、京都の選手が足を滑らせ転倒。これでフリーになった千代反田が高い打点から、悠々とヘディングシュートを叩き込む。貴重な先制点は、徳島に転がり込んだのだ。
 
「これまでなかなかセットプレーのチャンスで決められずにいたけど、アレックスから良いボールが来た。先制点を与えたら厳しい展開になると思っていたし、この1点で京都のリズムを変えられた」(千代反田)
 実際この一撃で、京都の勢いは途絶え、徳島は流れに乗った。
 
 追加点も〈京都は背後のスペースを突くと、守備が脆い〉というスカウティングが活かされた。43分、右SBの藤原のフィードを高崎がヘッドでゴール前へそらし、そのボールに向かって津田が弾丸のごとく追いかける。最後は安藤を振り切り、右足のアウトにかける技ありのシュートを突き刺す。同点では昇格できない徳島にとって、実に大きな1点だった。
 
「少し左寄りになって大丈夫かなと思ったけど、まずDFに一歩競り勝つことだけを考えていた」(津田)
 それでも京都に1点返されれば、たちまち先が読めなくなる状況である。ただ後半、しっかり地に足を着けて戦えていたのは徳島のほうだった。徳島はFWにドウグラスが入り、さらに左MFにアレックスがポジションを上げ、京都守備陣の攻撃参加を許さない。
 
 そしてベテランの斉藤が3枚目のカードとして切られ、中央の守備をぶ厚くする。大木監督が「慌ててしまった」と認めたが、京都の波状攻撃は時間が経つごとにみるみる影を潜めていった。

次ページ苦しみ抜いた先に待っていた歓喜。

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