【鹿島】「今日は入らない日か?」それでも決めてみせた伊藤翔の4点目が持つ意味

2019年09月26日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「ファーストタッチが良かったので、これはいけるな、と」

古巣横浜との天皇杯ラウンド16で、勝利を決定づけるチーム4点目を決めた伊藤。声援を送るサポーターに対し「なんとかゴールで返せればと思っていた」。写真:徳原隆元

[天皇杯ラウンド16]鹿島4-1横浜/9月25日/カシマ
 
 勝負を決定づける、価値ある4点目だった。
 
「(中村)充孝が今日は3点取ってくれたけど、それで3-1で勝つのと、また違うと思う。もしかして1点取られて3-2になったら、相手にもちょっと『可能性があるかも』と思わせてしまうかもしれない。その意味では、息の根を止められたんじゃないかな」
 
 天皇杯ラウンド16の古巣横浜戦、2トップで先発フル出場した伊藤翔は、59分と65分にそれぞれ決定機を迎えながらも、相手GKの好守に阻まれてゴールネットを揺らせずにいた。「シュートの感覚は悪くなかったけど、今日は入らない日か?」と観念しかけていたが、三度目のチャンスは逃さなかった。
 
 77分、自陣からドリブルで持ち上がった小池裕太からパスを受けると、GKとの1対1を鮮やかなチップキックで制した。
 
「冷静に決められました。あれはけっこう得意な形だったので。GKの動きも見れていたけど、ファーストタッチが良かったので、これはいけるな、と。いいところに止められて、そのままスピードに乗って、自分の間合いでシュートを打てたから、ああいうチップキックになりました。練習通りという感じです」
 
 得点後には、勢いそのままにゴール裏のサポーターの前まで行き、両膝に手をついて小休止。「やっと入ったよ、ごめんねーって(笑)」という意味を込めたジェスチャーだった。
 
「サポーターのみんなも、いつも通りに、いっぱい(自分の名前を)コールしてくれていて。なんとかゴールで返せればと思っていた」
 
 相手の戦意を挫く、とどめの一発。浦和とのルヴァンカップ準々決勝第2レグでも、伊藤は似たような働きを示している。アウェーでの第1レグは3-2。ホームで迎えた第2レグでは一時1-2と勝ち越されてしまう。最終的には2-2のドローで決着し、トータルスコア5-4でベスト4に進むのだが、勢いづく浦和に引導を渡す形となる同点弾を決めたのが、伊藤だった。
 
 この浦和戦でも伊藤はいくつかのチャンスをモノにできずにいたが、最後には帳尻を合わせる。
 
「あれで1点取れるのと、取れないのとでは、FWとしての感覚というか、やっぱり後味も全然違う。そういう意味では良かった」
 
 点を取るだけでなく、例えば、高い位置からの守備では相手のボランチに背後からプレッシャーをかけるなど、地味なタスクをコツコツとこなす。
 
「あれ、ボランチからすると、ウザいですからね。チョロチョロされると。だから、相手の嫌なことをやっていかなければいけないし」
 
 そんな地道な作業も、FWとしての成果につながることを知っている。
 
「あそこでボールを取れれば、一番点が入るので。そこは意識していますね」
 
 いくらチャンスを外していても、守備ばかりに追われているように見えても、ピッチに立っている限り、虎視眈々とゴールを狙っている伊藤からは目が離せない。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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