「どんな状況でもガンガン勝負していた」梅崎司が古巣・大分の地で思い出した「ガムシャラ」だった日々

2019年09月15日 柚野真也

ユース時代を過ごした思い出の地で2008年以来の古巣との対戦

約2か月ぶりのスタメンを飾った梅崎。古巣・大分との一戦に臨んだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 梅崎司にとってプロキャリアをスタートした大分の地での試合は格別なものだった――。2008年に浦和に移籍したシーズン以来の対戦。「やはり大分との試合は特別。ユース時代を含めて僕を育ててくれたチームだから。若くして代表までたどり着けたのも大分だった。挑戦的な姿勢は誰にも負けない。そんな覚悟と自信を持ってプレーをしていた」と、かつて在籍した頃の自分を述懐する。


 この試合は7月20日の札幌戦以来の先発出場。「久しぶりのスタメンだったがコンディションは良かった。でも、それ以上に大分が良かった。ボール回しが上手く、追いかけ回され疲弊した。流れを掴むのが難しかった」と試合後に大粒の汗を拭い振り返った。トップ下で出場し、ギャップでパスを受け、得意のドリブルで試合の流れを引き寄せる。プロ2年目に大分でレギュラーを勝ち取った頃のプレーより熟練されていた。

 もちろん十数年のキャリアの中で、ビッグクラブでプレーした経験もある。変わらないわけがないが、「浦和でプレーして幅が広がった。昔はボールを持てばどんな状況でもガンガン勝負していた。ただ、前を向いてプレーをすることはいいこと。仕掛ける姿をもっと見せたかった」と気持ちは十代の頃のままだ。

「日本一のプレーヤーになり、世界のトッププレーヤーになるのが僕の夢。それを目指して頑張っていきたい」
 常に高い目標を掲げ、小さい頃からコツコツと努力を積み重ねてきた。「挑戦こそ自分のすべて」と信じて疑わない梅崎が、自分の行く先を真剣に考えるようになったのは、イビチャ・オシムの存在が大きい。

「オシムさんはリスクを背負って攻撃しなければいけないといつも言っていた。それは人生も同じ。自分で仕掛けなければ、僕は平凡な選手で終わってしまう。挑戦こそすべて」と決意表明し、大分を飛び立った。
 
 あれから12年。順風満帆だったわけでない。選手層の厚いビッグクラブでのポジション争い、怪我でプレーできない時期も長かった。しかし、その困難が血となり肉となり、32歳となった今でもボールを追えることに感謝している。「この町でプロになることを夢見て、ひたすら練習した。ガムシャラだった頃の自分を思い出した。まだまだやれると思ったし、やらなければいけない」

 重心の低い、キレとスピードのあるドリブルからゴールまでの形を常に描く。相手DFに掴まれても振り切ってゴールを目指す。沈滞したムードを打破するプレーが梅崎の真骨頂だ。

 原点回帰。思い出の地でかつての自分を思い出した男は、低迷するチームの起爆剤となり、勝利に導くはずだ。「もっとチームを勝たせるプレーをしなければいけない。来年も大分と対戦して、次は勝つ。そのためにも残留を確かなものにしなければいけない」と語り、スタジアムを後にした。

取材・文●柚野真也(スポーツライター)
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