【検証 昇格プレーオフ準決勝】取れず、守れず、勝ち切れず…J1復帰を逃した磐田に足りなかったもの

2014年12月01日 熊崎敬

「ゲームの流れを読めていない」

リードを守り切れず、J1復帰を逃した磐田。脇の甘さが、山岸の同点弾を招いたとも言えるだろう。 (C) SOCCER DIGEST

 駒野友一、伊野波雅彦、松井大輔、前田遼一という代表経験者を抱え、J2優勝候補筆頭と目されたジュビロ磐田が「残留」することになった。
 
 J1復帰の望みはロスタイム、山岸範宏のヘッドによって打ち砕かれた。考えられない結末。不幸としか言いようがないが、シーズン最後の7試合で一度も勝てなかったという事実を考えると、この敗戦は偶然という言葉だけでは説明できない。
 
 試合後、磐田の選手たちは憮然としていた。自分たちが、この敗戦を招いてしまったことを自覚しているからだ。
 
「ゲームの流れを読めていないと思う。守るか、攻めるか。その判断をチームとしてできていない部分がある」(駒野)
 
「山形の決勝点の場面、あれをコーナーにするか、スローインにするかだけでも全然違う。今日は何度かコミュニケーション不足があった。最後は紙一重だけど、集中力がないといった問題があった」(伊野波)
 
「勝ち切れへんゲームが続いた。今日も2-1にできるチャンスがあったのにできず、失点した。去年から、こういう試合が多いんです。今日はチーム力の差が出ました」(田中裕人)
 
 流れがあった時間帯に得点できず、終盤に一発を浴びる。駒野は前に行くか後ろで守るか、意思統一ができなかったと語っていたが、これはJリーグで頻繁に見られるパターン。最近の浦和レッズも同じことを繰り返している。
 
 Jリーグが最後の最後まで面白いのは、優位な状況のチームが土壇場で慌ててしまうからだ。日本代表経験者が数多くいながら、しっかりとゲームを締められない。これは不思議なことだ。
 
 名波浩監督は、「サイドのスペースで時間を作ろうと言っていて、意志の疎通はできていたと思う。でも失点の前は、それが上手くいかなかった」と語った。磐田の選手たちはコーナーにボールを運び、時間を稼ごうとする場面もあったが、徹底することができなかった。
 
 取るべきところで取れない。守るべきところで守れない。
 
 それができないのは、チームを背負い、自分の判断で状況を解決できる選手がいないからだ。
 
 磐田や浦和とは違い、鹿島アントラーズは数少ない締め方を知っているチームだろう。
 
 ビスマルクが「こうやって試合は終わらせるんだ」と手本を示し、そこから若手たちが学んでいった。それは鹿島というチームの伝統となった。
 
 山岸のヘッドは10年に一度見られるかどうかという、歴史的な瞬間だった。だが磐田の脇の甘さが、それを招いた。Jリーグにはスリルとサスペンスが多すぎる。試合をコントロールする術を身につけなければ、劇的ゴールの価値が半減してしまう。
 
取材・文:熊崎敬
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