【J1コラム】ギャンブルに近い「4-3-3」 清水を待つのは落とし穴?|柏 3-1 清水

2014年11月30日 熊崎敬

対策を練ったはずのサイドを崩され…。

大榎監督は攻撃的な姿勢を貫くが、結果がついてこない。最終節に残留を懸ける清水にどんな結末が待っているのか。 (C) SOCCER DIGEST

 最終節を残してC大阪の降格が決まり、残り1枠は大宮、もしくは清水に絞られた。
 
 今節は5連勝中の柏と残留争いの渦中にいる清水のゲームを観たが、立ち上がりの布陣を見て柏が勝つだろうと思った。
 
 柏の5-2-3に対して清水は4-3-3。
 清水の4バックは、柏のドゥドゥ、レアンドロ、太田徹郎の3人を抑えなければならず、そこに大外からキム・チャンス、もしくは橋本和が上がってきたら、守備の枚数が足りなくなるからだ。
 
 これは31節の川崎戦での印象と同じ。もっとも、このときは清水が3-2で勝った。ぼくの予想は外れたわけが、残留を争っているというのに、清水は撃ち合いを挑んでいる。
 
 清水の大榎克己監督は攻撃的なスタイルを貫くため、4-3-3を採用している。だが、この布陣はボールを支配してこそ威力を発揮する。反対にボールを持てず、前線でのプレスがかからなければ、最終ラインが数的不利にさらされる。
 
 残念ながら、この攻撃的姿勢は裏目に出ている。
 監督交代からの成績は4勝2分け10敗、21得点・36失点。無失点が2試合、1失点が2試合、2失点が4試合、3失点が6試合、4失点が2試合。これでは浮上できない。
 
 大榎監督によると、清水は天皇杯準決勝(G大阪に2-5)後の2日間、柏にサイドで起点を作られないためのトレーニングに時間を割いたという。だが、上手くいかなかった。
 
 10分に左サイドのスペースを太田に突かれ、レアンドロに先制された。38分にも同じような形からキム・チャンスにクロスを上げられ、ドゥドゥに決められた。結局、サイドから崩された。
 
 清水がどのように準備してきたのか、ぼくは知らない。ただ4-3-3の布陣で、好調柏のサイドアタックを封じようと思ったら、サイドを抑えるというよりCFレアンドロを徹底して潰さなければならない。
 
 傑出した技術、強さを誇るレアンドロを自由にすると、守りが彼に集中することになり、周りの太田やドゥドゥが浮いてくる。そして最後に、サイドに広大なスペースが空くことになる。
 
 柏の5バックは守備的布陣といっていい。キムや橋本は低い位置にスタンバイしている。攻撃的な浦和と比べると、ウイングバックが10メートル以上、後方に控えている。
 
 それでも柏のサイドアタックが抜群に機能しているのは、後方からの攻撃参加を待つだけのキープ力を、レアンドロが備えているからだ。清水は、そのレアンドロを自由にした。試合の要点が見えていなかったのだろう。
 
 清水は手痛い敗北(1-3)を喫した。だが、ライバルの大宮も勝点を落した。ロスタイムの失点で名古屋に敗れた(1-2)。
 
 清水は15位で最終節を迎えることになった。引き分け以上で残留。負けても大宮が勝てなければ残留。優位には違いない。
 ただ、ギャンブルに近い攻撃的姿勢を貫こうとしたら、その先に落とし穴が待っているかもしれない。
 
取材・文:熊崎敬
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事