痛み分けに終わった【鳥栖 1-1 浦和】を3つのポイントから振り返る

2014年11月30日 増山直樹(サッカーダイジェスト)

退場者を出した後もじわりじわりと圧力を。

文字通りの痛み分けに終わった鳥栖と浦和の一戦をポイントレビュー。 (C) SOCCER DIGEST

 阿部のPKで先制しながら最後の最後に追いつかれた浦和と、退場者を出しながら劇的な同点ゴールを奪った鳥栖。この引き分けにより、前者は自力優勝の、後者は自力ACL出場の望みがほぼ絶たれている。浦和は首位を譲り渡したG大阪と同勝点ながら得失点差は7、鳥栖は3位鹿島と勝点3差で得失点差は19だ。
 
 文字通り痛み分けに終わった一戦を、3つのポイントから振り返る。
 
ポイント1)ロングボールが飛び交った前半
 
 豊田というストロングポイントを活かしたい鳥栖の攻撃がロングボール中心になるのは想定内だったが、浦和も特に前半は「思ったよりつながず、長いボールを蹴ってきた」(藤田)。
 
 お互い負けられない戦いでリスクを回避したと言えばそれまでだが、浦和は過去の鳥栖戦での苦い経験から、カウンターを必要以上に恐れていたのではないか。いずれにしても、両チームとも効果的なショートパスによる崩しは見られず、後方でボールを回すシーンが多くなった。浦和がふたつ、鳥栖がひとつ作った前半の決定機は、いずれも自陣からの1本のフィードが起点だった。
 
ポイント2)国内最高レベルのGKの競演
 
 69分にPKで先制した浦和は、ペナルティーエリア内で李を倒してそのPKを献上した菊地の退場によって数的優位を手にし、その後も決定機を作る。そこに立ちふさがったのが、鳥栖の守護神・林だった。
 
 なかでも決定的だったのが、84分のセービングだ。エリア内からの森脇のシュートを立て続けに2本止め、ピンチを救ってみせた。本人は「止められてよかったけど、1本目をもっといいところに落としていれば2本目はなかった」と振り返ったが、このビッグセーブがなければ勝負はついていただろう。
 
 存在感を放ったのは、浦和のGK西川も同様だ。安定したセービングはもちろん、後方での落ち着いたボール回しは他者に真似できない芸当。ともにアギーレ体制下で代表に選ばれる日本屈指のGKが、均衡した試合を確かに演出していた。
 
ポイント3)同点ゴールの伏線
 
 殊勲の同点ゴールを挙げた小林は、次のように振り返っている。
「点を取るならセットプレーしかないと思っていた」
 その言葉通り、鳥栖はCKから同点ゴールをもぎ取ったが、そこに至るまでの伏線は確かに張られていた。
 
 まずは、殊勲の小林の投入。実は前節で菊地が肩を痛め、「この試合も(菊地が)出られるか分からない状態。2日前の紅白戦でも僕が出ていた」(小林)。しかもその日の練習では、この同点弾とほぼ同様の形でヘディングを決めている。そして菊地の退場で急きょ出番を得ると(退場の2分後に池田に代わって出場)、「練習どおりの形」(小林)でゴールを叩き込んだ。
 
 鳥栖はリードを奪われ、10人になってからも、じわりじわりと浦和に圧力をかけていた。同点弾の小林も、81分に投入された谷口も空中戦に自信を持ち、パワープレーはお手の物。前線の豊田、CBのキム・ミンヒョクを含め、サイズで浦和を上回り、重圧を加えていった。
 
「自分がブロック役になって周りを活かそうと思った」と最前線に上がったGK林の攻撃参加も見逃せない。結果、浦和のマークは乱れ、守備固めで入っていた長身の永田は、その林に引き付けられる形となり、同点ゴールは生まれた。
 
 同点弾を導いたCKは7本目だった。キッカーの藤田はCKに加え、それに匹敵するようなロングスローを何本も放っており、浦和ゴールに迫るセットプレーは数にして10回を超えていた。それらがすべて下準備となった結果、土壇場でのゴールが生まれたと言えるだろう。
 
取材・文:増山直樹(週刊サッカーダイジェスト)
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