【レジェンドの言霊】カレカのフットボール哲学――『ワールドサッカーダイジェスト』の人気連載が特別版として登場!

2014年11月28日 ジェフェルソン・ロドリゲス

重要なのはパスのクオリティーとテンポ。

カレカが大いに語ったそのフットボール哲学とは――。

 ワールドサッカーダイジェスト誌の大人気連載企画、フットボール史を彩ってきたレジェンドが自身のフィロソフィーを語る「レジェンドの言霊」が、特別版としてサッカーダイジェストWebに登場!
 
 1980年代を代表する点取り屋で、かつて柏レイソルでもプレーした元ブラジル代表のカレカが、そのフットボール哲学を大いに語ってくれた。
 
――◆――◆――
 
 僕のフットボール哲学、それは「ファンタジーと戦術の融合」だ。ファンタジーだけではフットボールにならないし、戦術だけではまったく味気ない、単調なそれになってしまう。
 
 ブラジル・ワールドカップの我らがセレソンを思い出してほしい。ファンタジーに欠け、戦術でがちがちに縛られたフェリポンのチームは結局、国民を歓喜させられなかったよね。
 
 理想のシステムは攻撃的な4-2-2-2。最も重要な要素がパスのクオリティーとテンポだ。
 
 いずれにしても、攻撃的な戦術にこそフットボールの未来があると、僕はそう信じている。相手を制御し、試合をコントロールして、そして勝つ。そうしてこそフットボールだ。
 
 フットボールとは本来、ファイナルサードで攻め続けることを目的とするものだ。そして相手を押し込むことは、実は最良のディフェンスでもある。それをするためには、スピードとインテリジェンスが必要だ。
 
 ロングボールは僕の哲学に反する。嫌いだね。パスをとことん繋いでチャンスを作る、そんなフットボールが理想だ。パスを繋ぐためには共通理解が必要で、それが戦術というわけだ。
 
 戦術を機能させるために重要なのが、ムーブメントだ。どの選手もいい意味でポジションに囚われず、つねにスペースを探してそこを突き、チャンスを作り出し、それを決める。そう、いわゆる全員攻撃・全員守備が理想さ。
 
 お察しのとおり、オランダの「トータルフットボール」が僕の哲学の基盤だ。74年と78年のワールドカップでのオランダ代表は、選手がめまぐるしくポジションを変え、DFもどんどん攻撃に参加した。DFの攻撃参加は、理想のフットボールに欠かせないファクター。推進力を生み出すのが、左右のサイドバックだ。
 
 トータルフットボールには、このスポーツの本質が凝縮されている。ただ、ピッチに立つ全員が、自分のやるべきこと、チームメイトのやるべきことを理解する必要がある。そして選手全員が優れたパス能力、個人戦術、ボールテクニックを持っていなければ成立しない。
 
 オランダのトータルフットボールの発展形が、2010年のスペイン代表と2014年のドイツ代表だ。
 
 そしてもちろん、70年メキシコ・ワールドカップのセレソンも忘れてはならない。このチームも、僕のフットボール哲学の源泉と言っていい。ペレ、トスタン、リベリーノ、ジャイルジーニョ、カルロス・アルベルト、クロドアルド、ジェルソン……本当に偉大な選手たちが集った奇跡のチームだった。
 
 全員に攻撃力があり、パススキルが高かった。しかも、所属クラブとは異なるポジションでプレーした選手が何人もいた。つまり戦術理解力が極めて高いタレントの集団だったんだ。
 
 70年のセレソン、74年のオランダ代表のように、すべての選手がフットボールを楽しみ、戦術的責任をもって自らを表現する。そんなフットボールこそ、世界中の子供たちが目指すべき理想だよ。

次ページ好感が持てるのはペップのバイエルンとドイツ代表。

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