「またあの舞台に立ちたい」EL出場を決めたフランクフルト。長谷部誠から漂う”揺るぎない自信”【現地発】

2019年08月31日 中野吉之伴

「まあ、悪くないスタートかな」

昨季同様、チームに欠かせない主力として出場し続けている長谷部。今季もそのリーダーシップは健在だ。 (C) Getty Images

 長谷部誠と鎌田大地が所属するフランクフルトは、ELプレーオフ第2レグで、川島永嗣所属のストラスブール(フランス)と対戦。3-0で勝利し、アグリゲートスコア3-1で2年連続となるグループリーグ出場を決めた。

 アウェーのファーストレグを0-1で落としていたフランクフルトは、この試合では2得点以上での勝利が必須条件。前半相手のオウンゴールで先制に成功したあとにGKとの交錯プレーでクロアチア代表FWアンテ・レビッチが一発レッドカードで退場するというアクシデントがあったが、後半、ストラスブールも55分にリナールドが報復行為でこちらも一発レッドカード。数的同数となったことでまた主導権を握ると、60分にフィリップ・コスティッチ、66分には鎌田のアシストからダニー・ダ・コスタが3点目を叩き込んで、試合を決定づけた。

 この試合で、長谷部はケガで欠場したダビド・アブラアムに代わり、キャプテンマークを巻いた。激しいボールの奪い合いでファールが多く、一発触発の雰囲気がある中、落ち着いたプレーでチームを掌握しつづけた。守備では的確なカバーリングとスペースへのアプローチで相手に決定機を与えずに無失点に貢献し、攻撃でもたびたび起点となるパスを前線に送った。

「1戦目は0-1でアウェーゴールを取れなかった。今日はもちろん2点以上取らなければいけない状況で、もし1点取られたら、3点を取らなければいけないという、非常に我慢しなければいけないゲームだった。

 ただ、前半から自分たちの形でできていたし、相手もスタジアムの雰囲気に呑まれているなとも感じていた。ひとり退場になってからも、危ないシーンを作られたわけではないので、とにかく我慢。辛抱強く守って点を与えず、どこかでチャンスを作り、点を取りたいなと考えていた」

 試合後にそう語ったキャプテンの表情は満足そうだった。昨シーズン、フランクフルトはELで旋風を巻き起こした。今季も期待が大きかっただけに、本選出場は、まずノルマ達成という手応えかという問いに、長谷部はこう答えた。
 
「去年ベスト4に行って、準決勝では最後までチェルシーを相手に戦い、PK戦で敗れたけれど、あの場にたどり着くまでの道は、このクラブにとっては非常に大きかった。またもう一度あの舞台に立ちたいと、チームもファンも思っている。その強い気持ちを感じていた。

 今日の試合は、チームメートも口にしていたが、今季で一番大事な試合だった。そういう大一番で、自分たちの強いメンタリティ、気持ちは示せたと思う」

 大事な試合でファンの声援の後押しを受けて、ホームでしっかりと勝利できたことは、今後の戦いぶりに大きな意味を持つものとなるだろう。

 今季はEL予選の影響で始動が早い。すでに公式戦も9試合を数える。昨シーズン以上にハードなスケジュールとなる可能性もあるが、長谷部はこの始まりを上々と捉えている。

「(DFB)カップ戦、欧州リーグも勝ち上がっている。リーグ戦は1勝1敗。まあ、悪くないシーズンスタートかなと思う。次のリーグ戦で(対デュッセルドルフ)、ホームで勝ち点3を取ることができれば、よりいいスタートが切れた、と言えるかなと考えている。(代表ウィークで中断する)休みに入る前に、これまでの全部を試合で出したい」

 その声は、揺るぎない自信に満ちあふれていた。

 フランクフルトはドローの結果、ELのグループステージは、アーセナル(イングランド)、スタンダール・リエージュ(ベルギー)、ヴィトーリア(ポルトガル)と同組となった。

 35歳を迎えてもなお、経験が確実に力となっている長谷部。彼の存在とともに、フランクフルトは、どこまで勝ち上がることができるだろうか。

取材・文●中野吉之伴
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