大型補強でヴィッセル神戸はどう変わるのか?浦和戦で見えた確かな手応えと新たな悩み

2019年08月18日 白井邦彦

守備の安定が攻撃力を生む

イニエスタがペナルティエリアの角近くから仕掛ける場面が増えた。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 守備の大型補強がヴィッセル神戸にもたらした効果は何か。3−0快勝の浦和レッズ戦で見えたのは、守備が安定すれば本来の攻撃力が蘇るという図式だった。

 それを紐解く前に、この夏の新加入選手をおさらいしておく。まずレバノン代表DFのジョアン・オマリが加入し、次に横浜F・マリノスのGK飯倉大樹、そして元バルセロナのCBトーマス・フェルマーレン、大分トリニータの藤本憲明と続き、最後にハンブルクの酒井高徳。

 いずれも完全移籍で、藤本以外はすべて守備の選手ということからも、今回の補強ポイントはJ1ワースト2位タイの失点数(39失点)を減らすこと。特に豊富な欧州でのキャリアを持つフェルマーレンと酒井の加入は大きかったと見ていい。
 
 浦和レッズ戦では新加入5人のうち、飯倉、フェルマーレン、酒井の3人が先発。オマリ、藤本の2人がベンチ。

 フォーメーションは3−5−2。3センターバックにはダンクレー、大﨑玲央、フェルマーレン。ワイドは右が西大伍、左が酒井。中盤は、アンカーにセルジ・サンペール、インサイドハーフの右に山口蛍、左にイニエスタという配置。そして2トップには田中順也と古橋亨梧が入った。
 
 試合は前半からヴィッセル神戸がゲームを支配した。最終ラインの3人プラス飯倉でボールを回しながら、サンペールが小気味のいい縦パスでリズムを作っていく。そして最後はイニエスタが決定的な仕事をする展開。

 サンペールは「(3−5−2の)このシステムになってから、前にアンドレス(イニエスタ)がいることで(相手の注意が彼に引きつけられ)自分は前を向いてプレーできるようになった」と振り返っている。

 これによって、イニエスタが引いてゲームを作る場面が減り、得意とするペナルティエリアの角近くから仕掛ける場面が増えた。この位置から正確なスルーパスが出せ、鋭いドリブルがあり、シュートまであるイニエスタは、相手にとって脅威だ。

 浦和レッズ戦では関根貴大と岩波拓也の2人を翻弄し、再三にわたってチャンスを演出した。言い換えれば、イニエスタがこの位置にいるヴィッセル神戸が本来の姿で、3−0という結果がそれを物語っている。

次ページ守備力が改善し、これからは嬉しい悩みが…

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