「トミは本物の戦士」「ユニはバカ売れ」ボローニャはなぜ冨安健洋を獲得したのか。関係者の評価と現在の序列は?【現地レポート】

2019年08月02日 パオロ・フォルコリン

一年をかけて調査した結果

ボローニャへ加入した冨安。セリエAで戦う日本人選手は11人目だ。 (C) Alberto LIGRIA

 歴史は繰り返される。中田英寿がボローニャにやってきてから15年、日本人が伝統あるロッソブルーのユニホームを再び纏うことになった。冨安健洋。ボローニャは、ベルギーのシント・トロイデンに900万ユーロ(約11億2500万円)を払ってこの日本代表CBを獲得した。この金額はシント・トロイデン創立以来の最高額だという。まだ20歳という若さから、未来を見据えての獲得でもある。
 
 しかしなぜ冨安だったのか? 実はボローニャはかなり以前から目をつけていた。このクラブはスカウト網がしっかりしていて、ヨーロッパ中のリーグに常に目を光らせている。ベルギー・リーグもしかりで、ほぼ丸一年をかけ、代表戦も含めてずっとそのプレーを注視してきた。
 
 その結果は満足のいくものだった。彼らが気に入ったのは冨安のDFの基礎となる資質の高さだ。フィジカルの強さ、先を読む力、複数のポジションをカバーできる柔軟性、また攻撃の起点ともなり、守備だけでなく空中戦にも長けている。
 
 7月半ばにチームに合流した冨安は、すぐに"正しいやり方"で溶け込んだ。新入りはまずチーム皆の前に引き出され、仲間からいじられるという、入団儀式のようなものがボローニャにはある。彼はそれを陽気に受け入れた。キッチンの泡だて器をマイクがわりに、あらん限りの声でシャウト、かなり謎なダンスも披露し、チームメイトたちの笑いを誘った。
 
 また入団の記者会見では、イタリア語でいくつかのフレーズをしゃべり、記者たちを驚かせた。態度も落ち着いていて、礼儀正しい。
 
 ただ、だからといってトミ(自分のことをそう呼んでくれと彼が言った)がすぐにレギュラーとなれるかといえば、その答えは多分ノーだ。それは決して彼に才能がないからではない。彼がこれまでプレーしていたベルギーにはクリスチアーノ・ロナウドも、ゴンサロ・イグアインも、ロレンツィオ・インシーニェも、エディン・ゼコもいなかった。
 
 こうした名だたるストライカーたちと対峙するには、どうしても時間が必要だ。まずイタリアのサッカーに慣れなければならない。ベンチでセリエAのサッカー間近で見て、途中交代で徐々に慣れていくことで、すぐに潰されるのを防ぐのだ。

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