【日本代表 検証】支配率よりゴール――ポゼッション幻想に終止符を打つ快勝か

2014年11月15日 熊崎敬

手放しでは喜べないが、得たものは決して小さくない。

ホンジュラスが不甲斐なかったとはいえ、縦に速い攻め、1対1の激しさといったアギーレの志向を体現しての勝利には価値があるだろう。 (C) SOCCER DIGEST

 過去4試合の鬱憤を晴らすかのようなゴールラッシュ。これには、ふたつの大きな理由がある。
 
 まず、ベテランの復帰によって試合運びが格段に安定した。とくにアギーレ監督が「彼らは仕事がわかっている」と称賛した遠藤、長谷部の存在は大きかった。
 
 ぼくは戦前、「ベテランが戻ってきても、システムが違うのだから機能する保証はない」と書いたが、それはいい意味で外れた。彼らは監督の意図を汲み、球際の強さや縦への速さを表現した。
 ザックジャパンでも心臓として機能したふたりが、しっかりとリズムを作ったことで、チーム全体に落ち着きが生まれたのだ。
 
 もうひとつの理由は、対戦相手のホンジュラスが弱かったということ。
 アギーレ監督はスコアほど楽ではなかったと語ったが、その一方で「試合は個別に判断するべきだ」と述べている。
 つまりサッカーは相対的な要素が強いスポーツで、いいプレーをしても敵が強ければ負けるし、悪いプレーをしても敵が弱ければ勝つことができる。当たり前だが、対戦相手のレベルを考慮しなければ、試合を正しく評価することはできないのだ。
 
 だから、この勝利は手放しで喜ぶようなものではないだろう。ただ、その一方で得たものは決して小さくないと思う。
 それは縦への速い攻め、1対1での激しさといった、アギーレ監督が志向するスタイルを選手たちがしっかりと体現していたからだ。
 対戦相手はともかく、「新監督がやりたいのはこういうことなんだね」という手応えを選手(とファン)がつかんだのは、アジアカップに向かう上で大きいはずだ。
 
 サッカーは相対的なスポーツだから、4日後のオーストラリア戦(11月18日)でもこんなプレーができるかどうかはわからない。だが、ものすごく楽観的に捉えれば、こんなふうに考えることもできる。
 アギーレのサッカーは支配率よりゴール――。日本サッカー界が長く囚われてきたポゼッション幻想に、近い将来、終止符が打たれるかもしれないのだ。

次ページ居場所を見つけられず苦しんでいたのは――。

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