復帰戦で伝家の宝刀が炸裂!上田康太が見せたプレースキッカーとしての矜持

2019年07月20日 寺田弘幸

ブランクがあってもキックの感覚が鈍ることはない

4月に負傷離脱した上田が戦線に復帰し、存在感を示した。写真:滝川敏之

 上田康太の左足のキックは抜群の精度を誇っている。それはもうJリーグファンには周知のことだろうが、3か月近くの離脱を経て復帰した上田は、あらためて自分の価値を証明するかのように凄みの増したプレースキックを蹴ってチームに勝利をもたらしている。
 
 前半戦最後の試合となった21節・鹿児島ユナイテッドFC戦は、復帰した背番号14のために舞台が整えられていたような試合だった。前半からファジアーノ岡山は試合を優勢に進めていたが、57分に相手のクイックリスタートに間隙を突かれて失点。追い掛ける展開になって有馬賢二監督は74分に上田をピッチに送りだした。
 
 上田はまだチームの全体練習に合流したばかりで練習試合も重ねていなかったが、「普段の練習を試合以上のインテンシティでやっている中で彼がプレーできていたし、彼が今まで積み上げてきたことがある」(有馬監督)。練習中のパフォーマンスと実績をかわれてピッチに立つと、10分後に絶好のチャンスが到来する。
 
 仲間隼斗が左サイドから中央へカットインしてペナルティエリアのすぐ外でFKを獲得。「みんなが蹴らせてくれる雰囲気だったし、どっちにしても蹴っていたと思います」と笑って振り返った上田は、「しっかりと冷静に集中して蹴れました」と自身も納得のキックを蹴り込んだ。

 フルスイングではなく壁の上を越してゴールマウスに流し込む繊細なタッチで捉えたボールは、美しい弧を描いてゴールに吸い込まれていった。ブランクがあってもキックの感覚が鈍ることはないと上田は言う。
 
「FKを蹴る前にCKを蹴ったとき、思っていたよりも低目にいった。なのでちょっと微調整をしましたけど、それは日によっても違うもの。休んでいたからっていうことはないですね」

 これまで幾度もゴールを決めてきたプレースキッカーは矜持をのぞかせた。
 
 このゴールで勢いに乗った岡山は試合終了間際に中野誠也が自ら奪ったPKを決めて逆転勝ちを収めると、翌節のFC琉球戦でもチームが1点リードしている状況でピッチに立った上田がFKをピンポイントでイ・ヨンジェの頭に合わせて追加点をお膳立て。チームは今季三度目の連勝を収めて後半戦のスタートを切ることに成功している。
 
 復帰して即、チームの勝利に貢献した上田は、「離脱して迷惑をかけた分、チームに返していかないといけないと思っている」と意気込む言葉にも力がこもる。これからはモンテディオ山形、ヴァンフォーレ甲府、柏レイソルと上位陣との対戦が続く重要な時期を迎える岡山に、頼もしい背番号14が戻ってきた。
 
取材・文●寺田弘幸(フリーライター)

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