J2首位山形に昨季チームアシスト王が復帰。いまだコンディション不良も三鬼海を先発させる木山監督の狙いとは…

2019年07月11日 嶋 守生

リスクを負っても、復帰させたいと思わせる三鬼海の持ち味は...

昨季はプレースキックなどで、チーム最多の6アシストだった三鬼海。写真:徳原隆元

 7月3日の天皇杯2回戦、栃木SC戦でモンテディオ山形のDF三鬼海が約1か月ぶりに公式戦復帰を果たした。5月下旬に肉離れで別メニュー調整に入ってから、6月下旬にチームに復帰したばかりだが、コンディションが万全でないなかで先発し、続く中3日のリーグ21節・愛媛FC戦でもスタメンに名を連ねた。
 
 いずれも60分ほどで交代しており、「愛媛戦は今年の中でも最悪だった」と、シーズン前半戦に右サイドを支え続けた三鬼の姿からはまだ遠い。コンディションが上がってくるのはこれからだろう。
 
 三鬼が不在の間、右ウイングバックでは柳貴博がブレイクしてチームを支えた。柳は縦の推進力や1対1の対人などで良さを出しながら、試合を重ねるごとに急成長している。
 その成長には「自分と違ったストロングポイントがチームの良さになりつつある。頼もしいと思った反面、悔しい気持ちも多少あった」と三鬼も認めるほどだった。
 
 柳はウイングバックなら右だけでなく左もこなし、3バックの右に入ることもできる。クロスの質やゲームメイクの上手さで勝負する三鬼とはプレースタイルが違うため、ポジション争いだけでなく、2人の共存も選択肢に入ってくるだろう。
 
 柳のおかげで、一見すれば右のウイングバックは安泰のようにも見える。三鬼も本来ならもう少し時間をかけて調整しても良さそうだが、それでも三鬼を起用したのは「試合をしないとコンディションは上がらない。一日でも早く上がってほしいから使っていこうと。怪我をするまでに、それだけのものを彼は示してきた」と言う木山隆之監督だった。
 
 怪我の再発というリスクもある中で、木山監督がここまで三鬼の復帰を待ち望んだ理由はいくつか推測できる。
 
 ひとつは選手層が薄くなっていることだ。正式なリリースは無いが、現在、筋肉系のトラブルなどで何名かの選手が別メニューで調整している状態。これから、より消耗が激しくなる夏場の戦いに臨むことを考えれば、天皇杯でも使いながら、主力中の主力の三鬼を早期復帰させたいと思うのは当然だろう。
 
 もうひとつは、前半戦を終えて全体の3割近い得点を挙げているセットプレーのキッカー不足だ。山形のキッカーはその多くを三鬼が務めていて、今季はこれまで1アシストながらも、こぼれ球を押し込んだり、栗山を中心に何度も決定機を作りだせたりと、決定機に絡むことが多かった。

次ページ劣勢にあっても、セットプレーから攻撃にリズムを生み出せるのが山形の強み。

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