「0-13」の記録的大敗も…タイ女子代表に訪れた最終戦前のささやかなドラマ。奮闘を見せた“チャバーゲーウ”の結末は?

2019年06月30日 佐々木裕介

実に熱かった16番目の椅子を争うレース

グループリーグ敗退に終わったタイ代表だが、第2戦のスウェーデン戦では同国初の本大会初得点をマークした。写真:佐々木裕介

 世界各地で多くの国際大会が繰り広げられている。フランスでもFIFA女子ワールドカップが絶賛開催中だ。現地で数試合観戦したのだが、フットボール先進国でのコンペティションの雰囲気は流石だった。
 
 日本では、なでしこジャパンの"世界女王奪還への道"が注目を集めた裏で、2大会連続2度目の出場となったタイ代表も同様に、大いに"話題"を振り巻いた。
 
『出場国の数だけ、ドラマがある』
 
"話題"とは、世界をも騒がした王者・アメリカ代表に歴史的大敗(0-13/ワールドカップ最多得点と最多得点差記録を更新)を喫したことから始まった。
 
 2試合を残しても、もはや勝ち抜くことなど不可能と思われた状況だったのだが、最終戦(チリ戦)を前に他力本願ながらも勝ち抜く可能性を残す展開に、タイメディアは再びざわめき立ち、"奇跡を起こせ"キャンペーンを展開し国民を煽る"話題"を提供してみせた。
 
『最後の椅子を掛けた女たちの戦い』
 
 この3位チーム上位成績4か国枠、云わば"16番目の椅子"を争うレースが実に熱かった。対象国は、驚異的な精神力を魅せたアルゼンチン、強豪国にも食い下がってみせたカメルーン、そして首の皮一枚繋がったタイ。
 
 先ずはスコットランド代表対アルゼンチン代表戦が劇的ドロー(3-3/アルゼンチン0-3からアディショナルタイムにPKで追い付く)を演じてくれたことで、彼女たちの物語が繋がったのだ。
 
 そして最終戦を勝利することが最低条件のタイ。同日、自らの試合3時間前に行われた他会場(カメルーン代表対ニュージーランド代表/引き分けが絶対条件)の結果次第という"他力本願"の状況下で、試合はドローのまま進んだのだ。しかし、望みは終了目前で潰えてしまう。カメルーンが2対1で勝利、最後の椅子に座ってしまったからである。
 
『24通りのワールドカップの挑み方』
 
 メディカルトレーナーとしてタイ代表に帯同した白木庸平氏は、大会を振り返りこう語る。
 
「タイ人は良くも悪くも"受け流す"のが上手な国民性なのですが、初戦の大敗(対アメリカ代表/0-13で敗戦)は相当悔しかったみたいです。試合後に泣き崩れたり、悔しくて試合日と翌日と、ほとんど寝られなかった選手もいたという話も耳にしました。またスマホ好きな選手に対して試合に集中して欲しいという監督のメッセージなのでしょうか、試合前日22時から当日朝の食事まで携帯をマネージャーに没収されたり。いままでのタイ代表では見られなかった側面を感じました」
 

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