高木琢也監督も称賛する昇格組のルーキー!吉永昇偉の原動力は後輩たちへの想い

2019年06月28日 松澤明美

高木監督が「そろそろベンツに乗ってきますよ」と冗談も

15戦の柏戦でデビューを果たした吉永は、続く16節の福岡戦からスタメンの座を掴んだ。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 大宮アルディージャジュニアからオレンジ一筋。ユース昇格組のルーキー・吉永昇偉がまばゆい光を放っている。
 
 5月18日の栃木FC戦で初めて帯同メンバーに加わり、26日の柏レイソル戦でプロデビュー。負傷した山越康平に代わって緊急出場すると、右ウイングバックに入って堂々たるプレーを見せた。個の能力が高い元J1勢と渡り合い、後半アディショナルタイムには左足シュートも放った。吉永は「柏レイソルさんはJ1にいたチームだったので、そういった相手にプレーできたら自信にもなるなと、ワクワクした気持ちでピッチに入れた」と強心臓ぶりを発揮。抜擢に応えた吉永へ高木琢也監督が「大きな財産になった」と賛辞を送るほどだった。
 
 6月2日のアビスパ福岡戦からは左ウイングバックで先発の座に着き、指揮官の信頼を得て4試合連続スタメン出場中。本来は「7、8月の夏までに」(吉永)帯同メンバー入りを目指していたが前倒しで達成し、さらに上をいく活躍を見せている。高木監督も教えがいがあるようで、練習では身振り手振りの熱血指導も。高木監督は「(吉永は)感覚派よりは努力派の選手。そういう選手は積み重ねていくことで、いろいろなことが見えてくる」と19歳の頑張りに目を細めた。
 

 人懐っこい笑顔通りの愛されキャラ。同じユース出身で1歳上の奥抜侃志との居残り練習は、先輩・畑尾大翔も一緒に行ない、プレーとメンタルの両面で助言をもらう。また、取材陣に囲まれていると、高木監督が「そろそろベンツに乗ってきますよ」と笑って声を掛けることも。出場機会を重ね、懐が温かくなりそうなルーキーへのひと言で、本人は「月1万円も使わないタイプ。物欲がない」と頭をかく。貯めたお金は「ユースのメンバーや親に使おうと思っています」と優しく微笑んだ。
 
 プロの壁にも直面した。6月22日の東京ヴェルディ戦は迷ってプレーが消極的になり、シュートを打てる場面で躊躇してしまった。小、中、高校と経験したどの試合よりも「今日の試合が一番悔しかった。(スコアレスドローに)自分の中では負けっすね」と唇を噛む。試合に出ているゆえにプレーの選択肢が増え、迷いが生じるのだろう。ポジションを争う先輩選手たちも怪我から復調してきており、「守備だけとか、攻撃だけとかにならずに、両方の面でチームに貢献できるようにしたい」と気を引き締めた。

 スタメンは譲れない――。その原動力は下部組織の選手たちの希望の星になりたいから。「僕が試合に出ることによってユースの選手たちに、昇格1年目で出られるんだぞというのを見せてあげたい。僕が試合に出ないとユースの選手が自信を持てないと思う。僕が出るだけで自分たちもできるんじゃないかと思ってくれる」。ルーキーの背を押すのは、後輩たちへの思い。自分の姿が道しるべになればと、全力を尽くし続ける覚悟だ。
 
取材・文●松澤明美(フリーライター)
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