ドルトムントに全くチャンスはないはずだ 【バイエルン番記者】が“大一番”をプレビュー

2014年10月31日 パトリック・シュトラッサー

さらなる敗北と屈辱を与えようと――。

スーパーカップでは2-0でバイエルンに快勝したドルトムントだが、その後の歩みはまさに対照的。首位を快走するバイエルンに対し、ドルトムントは15位と低迷中だ。 (C) Getty Images

 バイエルンのジョゼップ・グアルディオラとドルトムントのユルゲン・クロップ。当代きっての指揮官の直接対決は、ここまで3勝2敗でクロップがリードしている。クロップの勝利は、昨シーズンのスーパーカップとリーグ戦のアウェーゲーム、そして今シーズンのスーパーカップ。ペップの勝利は、昨シーズンのリーグ戦アウェーゲームとDFBカップの決勝だ。
 
 6回目の対決となる11月1日のブンデスリーガ10節は、しかし、それほど大きな意味を持ちあわせない。ドルトムントはここまで15位と低迷中で、9試合ですでに6敗を喫しているのだ。
「最終的にドルトムントは上位に食い込んでくるだろうと、私はそう確信している。我々は、彼らとの差をこのままキープしなければならない」
 バイエルンのカール=ハインツ・ルムメニゲCEOはそう語っているが、本心は違うだろう。この対戦で宿敵ドルトムントにさらなる敗北と屈辱を与えようと、そう思っているはずだ。
 
 そしてバイエルンは、ドルトムントからマルコ・ロイスの引き抜きを画策している。来夏になれば、ロイスは2500万ユーロ(約35億円)の違約金で自由になる。バイエルンにとって、このドイツ代表MFの獲得は、一石二鳥の補強策だ。31歳のフランク・リベリの理想的な後釜を確保すると同時に、ライバルを弱体化させられる。
 
 いずれにせよ、ブンデスリーガの頂上決戦だったバイエルンとドルトムントの激突は、もはやタイトルを巡る戦いではない。
 
 群を抜く強さを発揮しているバイエルンに、ここまでなんとか食らいつけているのは、もうひとつのボルシアが唯一だ。つまり、ルシアン・ファブレ率いるメンヘングラッドバッハだけである。事実、前節の対戦では0-0の引き分けに持ち込んだ。いや、マヌエル・ノイアーの活躍がなければ、バイエルンは今シーズン初黒星を喫していただろう。
「僕たちは、少なくとも90分間バイエルンの魔法を解くことができると証明した」
 ワールドカップ優勝メンバーでもあるメンヘングラッドバッハのMF、クリストフ・クラマーはそう語った。そのためのレシピは、「ピッチのあらゆるところで1対1に持ち込み、勝負すること。そうでなければ、全くチャンスがない」(クラマー)。
 
 敵地ミュンヘンに乗り込むドルトムントには、残念ながら全くチャンスはないはずだ。それほど、いまのバイエルンは強すぎる。ここ数年はライバルとしてしのぎを削り合ってきた両チームだが、これから歩んでいく道は離れていくばかりだろう。そして2015年7月からは、ロイスがその距離をさらに広げることになりそうだ。
 
【記者】
Patrick STRASSER|Abendzeitung
パトリック・シュトラッサー/アーベントツァイトゥング
1975年ミュンヘン生まれ。10歳の時からバイエルンのホームゲームに通っていた筋金入りで、1998年にアーベントツァイトゥングの記者になり、2003年からバイエルンの番記者を務める。2010年に上梓した『ヘーネス、ここにあり!』、2012年の『まるで違う人間のように』(シャルケの元マネジャー、ルディ・アッサウアーの自伝)がともにベストセラーに。
【翻訳】
円賀貴子
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