【現地発】マドリーはなぜ久保建英を獲得したのか? トップチーム昇格の鍵となるのは…

2019年06月15日 セルヒオ・サントス

番記者も完全に虚を突かれた

マドリー加入が決定した久保。まずはBチームでの定位置確保が目標となる。 写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

「久保建英のレアル・マドリー入り」――この一報には、われわれマドリーの番記者も完全に虚を突かれてしまった。"今世紀ワースト"のシーズンを送ったマドリーが大型補強を敢行しているのは周知の通りで、誰もがエデン・アザール、ルカ・ヨビッチ、フェルラン・メンディといったトップチームの補強関連のネタ探しに躍起になっていて、正直、Bチームのことまで頭が回らなかったのだ。

 そこで久保の獲得である。バルセロナのカンテラ出身であり、ここスペイン国内でも18歳の誕生日を迎えるのを待っての古巣への復帰が既定路線であると伝えられていた。にもかかわらず、マドリーがなぜ獲得に至ったのか。

 もちろんマーケティング的要素が背景にあったことは否定しない。弱冠18歳でA代表デビューを飾った日本の至宝であり、モノになれば話題作りにおいてこれほどの価値はなく、クラブの売り上げにも多大なプラスアルファーをもたらすだろう。機を見るに敏な会長のフロレンティーノ・ペレスが、宿敵のバルサとの交渉が難航している状況を見て、素早く契約にこぎ着けたのもそうしたしたたかな計算が働いたのは間違いない。
 
 ただマドリーはいうまでもなく世界トップクラスのクラブであり、全ての前提として久保に大きなポテンシャルを認めた事実があったことは疑いようがない。加えてマドリーは近年、若手の獲得に力を注いでおり、しかもリクルートの門戸を世界的に広げている。ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴはもちろん、アンドリー・ルニン、マルティン・ウーデゴーなどがその代表格で、久保もまたその方針に則った獲得といえる。

 Bチームでここまで話題になった新加入選手は、そのウーデゴー以来だ。彼はカスティージャでノーインパクトに終わっても、トップチームでチャンスを得るなど、契約時に盛り込まれた様々な特権を享受し、チームメイトから総スカンを食らい、ついにチームに馴染むことはなかった(18-19シーズンはフィテッセにレンタル)。

 しかし久保の場合は、たとえば年俸面にしても2シーズン半で総額1050万ユーロ(約13億6500万円)というVIP待遇で迎えられたウーデゴーに比べ、100万ユーロ(約1億3000万円)はマリアーノ・ディアスやボルハ・マジョラルといった近年のエース格の選手も受け取っていた額で、決して破格というほどのものでない。

 また今夏のトップチームの全米ツアーに帯同すると報じられている点についても、シーズンが始まれば、カスティージャの練習に参加させるはずだ。
 

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