復活のイニエスタ。圧倒的な存在感で久保不在のFC東京を呑み込む

2019年06月16日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

ファンタスティックな先制弾

FC東京戦で華麗なシュートを叩き込んだイニエスタ。写真:滝川敏之

 6月15日の神戸戦に久保建英がいたら、試合後、"バルサつながり"のアンドレス・イニエスタと談笑しながらユニホームを交換するシーンが見られたかもしれない。そんなことを考えながら記者席から試合をチェックしていたが、その久保がコパ・アメリカ参戦で不在のFC東京を呑み込んだのは神戸の8番、イニエスタだった。
 
 4-4-2システムのセンターハーフでスタメン出場したイニエスタは、シンプルかつ効果的なプレーでビルドアップ。いつもより少し下がったポジションで、「チームのポゼッションに貢献した」(イニエスタ)。「空いたスペースで上手く(パスを)受けて攻撃を組み立てられた」と本人が言うように、圧倒的なスキルで観衆を魅了していったのだ。
 
 最前線のビジャへのスルーパスや高精度のクロスなどでチャンスメイクにも巧みに絡んだイニエスタが凄かったのは、どの局面でボールを受けても焦らず、確実にそのボールを味方につないでいたこと。何気ないプレーの質が極めて高く、だからこそ余裕を持ってチームメイトに優しいパスを出せる。「心地よかった」とのコメントが物語るとおり、この日のイニエスタは随所で優れた技巧を見せつけたのだ。
 
 最大のハイライトは、49分のファンタスティックなゴールだろう。西大伍の右サイドからのクロスをエリア内の左、ゴールから45度あたりの位置で受けると、室屋成のプレッシャーをものともせず、右足の巻いたシュートでGK林彰洋のニアサイドをぶち抜いたのだ。
 
 この試合が初陣のトルステン・フィンク監督へ捧げる先制弾については、イニエスタも「本当に素晴らしいゴール。勝点につながったという意味でそう思います」とコメントしていた。6試合のぶりのスタメンでいきなり結果を出すあたりはさすがのひと言だが、その一撃には怪我でチームに迷惑をかけてすまないという想いもあったのかもしれない。
 
「(以前に)コンディションが整っていない状態で試合に出て、むしろ悪化させてしまったのはミスでした。やるせない気持ちが強かったですね。でも今日はコンディションが良かった。元々90分出る予定ではありませんでしたが(90+1分で交代)、良い形で試合を終えられたと思います」。
 
 もちろん守備面で物足りなさはあった。全盛期の頃と比べたら……なんて批判もあるかもしれないが、この日の主役は間違いなくイニエスタ。ボールを持てば独特の雰囲気を醸し出す、その存在感はやはり格別だった。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
 
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