【高校選手権/代表校レポート】北海道大谷室蘭|夏の初戦敗退をきっかけに堅守に磨き

2014年10月27日 平野貴也

いかに頭を休めずにサッカーを続けるかがチームの生命線。

北海道大谷室蘭
所在地:北海道室蘭市八丁平3-1-1
創 立:1958年
創 部:1958年
主なOB:宮澤裕樹(札幌)、櫛引一紀(札幌)(C)Takaya HIRANO

「サッカーが楽しい、好き」なのは、当たり前。「サッカーに熱中」してこそ、選手は変わる。北海道大谷室蘭は、夏の屈辱から自らを見直して北の王者に輝いた。
 
 今季のチームは堅守を武器に、いい滑り出しを見せていた。1年時から公式戦を経験しているMF平塚悠知、DF深井祐希を攻守の大黒柱に、プリンスリーグ北海道では開幕から3勝2分けと好スタートを切って優勝戦線に食い込んだ。
 
 ところが、夏に入るとライバルチームの猛烈な突き上げにあった。リーグ戦では札幌一、駒大苫小牧に敗戦。インターハイ予選では、札幌創成に足下をすくわれてまさかの初戦敗退を喫した。競り合いやミドルシュートを得意とするMF中島洸は「リーグで首位に立っていて、普通にやっていれば勝てるという過信があったと思う。だから、余裕を持ちすぎてボールを奪われることもあった」と自分たちの甘さに気づかされたという。
 
 堅守を持ち味とするチームは、攻撃面ではしっかりと組み立てるものの、ボールを奪う位置が低くなりがちだ。そのため、奪った後のポジショニングやパスワークに対する集中力を欠けば、たちまちショートカウンターの餌食となる。
 
 平均身長も決して高くはない。プレスが緩めば精度の高いフィードやクロスを浴びてゴール前での際どい攻防を余儀なくされる。いかに頭を休めずにサッカーを続けるかが、このチームの生命線だ。
 
 北海道予選の決勝では、上背のある選手を揃える旭川実を完封。集中力の高い守備がPK戦での勝利につながった。小柄なMF島田将吾は「無駄なファウルをしないこと、クロスを簡単に上げさせないことを徹底した」と手応えを語った。
 
 甘さを突かれるチームから、隙のないチームへと成長した。その要因は、日頃の意識の変化にあるのではないかと主将の深井祐希は言う。インターハイ予選での敗戦後は厳しい走り込みを行ない、さらに新潟、千葉での合宿で連戦を組んでタフさを身に付けた。疲労を言い訳にしたくなる環境のなかで、シンプルに勝つことだけを考えるのは容易ではないが、負けるはずのない試合に負けた事実が彼らから言い訳を奪った。
 
 深井は「インターハイで負けて、及川監督から残りふたつのタイトル(プリンスリーグ、選手権)は必ず取るぞと繰り返し言われてきたけど、本当に優勝とかタイトルというものへの意識が大きく変わった。練習での厳しさが増して、今では試合前から『タイトルを取って当たり前』というぐらい、勝つことしか考えなくなった。自分たちでミーティングをする時間が増えたし、自主練習をする選手も増えた。サッカー以外の時間が減っていったという感覚がある」と勝つことに夢中になっている日々を振り返った。
 
 蘇った北海道大谷室蘭は、プリンスリーグ北海道を制し、高校選手権の代表権も獲得した。ポテンシャルをフルに発揮し始めたチームは、まだ校名が「室蘭大谷」だった2010年度以来となる選手権の全国大会に挑む。
 
 深井は「新しい、自分たちの成績を残していきたい。全国でも無失点で勝ち進みたい。それがチームの持ち味だから」と意気込む。他校より少し早く代表権を得たメリットを生かし、さらにハイレベルな舞台で自慢の堅守を示せるか。生まれ変わったチームの新しい挑戦が始まる。

【高校選手権photo】北海道予選決勝|大谷室蘭 対 旭川実
■北海道予選 決勝短評
北海道大谷室蘭 0(4PK3)0 旭川実
得点者/なし
 
 立ち上がりは風上の旭川実が攻勢だったものの、全体的には大谷室蘭ペースで進んだ。後半には、大谷室蘭のMF中島のミドルがバーを直撃。しかし、両チームとも粘りを見せて凌ぎ合いとなり、延長でも決着がつかずにPK戦へ突入した。延長戦で相手の猛攻を耐え切った旭川実は、後攻で1点をリードしていたが4、5人目が連続して失敗。対する大谷室蘭は、1人目で主将の深井が失敗したものの、その後は確実にネットを揺らし、劇的なPK戦勝利で全国への切符をつかんだ。
 
取材・文:平野貴也(フリーライター)
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