GKにも浸透するミシャ改革。韓国代表GKク・ソンユンの進化が止まらない!

2019年06月03日 斉藤宏則

1-0で勝利した広島は、「頭を使いすぎて、疲れましたね」

ク・ソンユンと最終ラインとの連係が深まり、シュートを打たれる前に相手の攻撃を撥ね返す場面も増えた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 6月1日の14節、サンフレッチェ広島戦。タイムアップの笛が鳴った瞬間、札幌の韓国代表GKク・ソンユンはペナルティエリア内で大の字になって横たわった。スコアは1-0。主将の宮澤裕樹やチャナティップら複数の負傷欠場者がいた試合は、その最中にも中野嘉大、鈴木武蔵が負傷で退く展開に。FWパトリックを投入して1点を追う広島に猛攻を受ける展開は、87分にルーカス・フェルナンデスが退場となって数的不利になり、より色濃くなった。
 
 そしてそうした試合を完封勝利で終えた守護神は、タイムアップの笛を聞き「あまりにも疲れて、立っていられなくなった」と横たわった理由を振り返る。
 
 GKのポジションである。フィールドは広く走り回るポジションではない。それでも身長195センチのタフガイを横たわらせた疲労は何なのか。「頭を使いすぎて、疲れましたね」とク・ソンユン。「マイボールの局面が続いた時間帯に、どのようにカウンターに対してのリスクマネジメントをするか。そのことをずっと考え続けていたんです。頭が痛くなりましたね(笑)」とも続けた。
 
 大型守護神はプレースタイルの幅を広げている最中だ。以前はその体躯と身体能力を生かし、ゴール前に立ちはだかる壁のように相手のシュートを防ぎ続けてきた。だが、GKにも攻撃力を求める"ミシャ"ことペトロヴィッチ監督が就任してからはビルドアップにも当たり前のように参加している。ミシャ就任時は「自分は起用されないかもしれない……」という不安もあったそうだが、地道な努力の末に現在ではスムーズにDF陣とパス交換をしている。
 
 また、DF陣とのコミュニケーションの部分も大きな成長を見せている。ビルドアップに加わるべく、かつてよりもグッと高いポジションを取るようになったことで「プレーが止まったときなどにDF陣と会話をしてプレーの修正をする機会がかなり増えた」という。

 その成果もあってか、今季はク・ソンユン個人のシュートストップよりも、グループとしての安定した守備で相手の攻撃を跳ね返せるようになってきた。決定的なシュートを打たれる場面はかなり減っている。GKとしての総合力が大きく高まっている最中とも言えるのかもしれない。ミシャ就任以前と比べて「自分は間違いなくレベルアップできている」と自負できる。
 
 また、登録は身長195センチとなっているが、「2センチくらい身長が伸びているはず」と物理的なサイズも大きくなっているとのこと。「街を歩いていて、看板に頭をぶつけて恥ずかしい思いをすることもある」と照れ笑いする。
 
 広島戦を終えてオーストラリア、イランと対戦する韓国代表合宿へ向かった。代表合宿に呼ばれながらもAマッチにはなかなか出場できない時期が続いているものの、レベルアップを経ていよいよ代表戦デビューも近づいているように思うが、「まだまだですよ。今回も先輩たちのプレーからいろいろと勉強してきます」と謙虚に自らを研鑽し続けていくスタイルは2015年の札幌加入時とまったく変わらない。
 
取材・文●斉藤宏則(フリーライター)
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