「バルサ化」は一時停止…「現実路線」を選んだ神戸が、それでも抱える複数の問題

2019年06月03日 サッカーダイジェストWeb編集部

吉田監督の支持を問われた三浦淳寛SDは「もちろん」と明言。

先制点を挙げたビジャも「今日はジュビロの方が良いサッカーをしていた」と語った。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 割り切った戦い方で2連勝を収めかけていたヴィッセル神戸が、最後の最後で白星を逃した。
 
 J1リーグ14節のジュビロ磐田戦は、開始3分に幸運な形から得たPKをダビド・ビジャが沈めて先制。前半途中から押し込まれる場面が目立ちながらも5バック気味の守備で耐え、逃げ切りに成功しかけていた後半アディショナルタイムだった。最終ラインを完璧に崩され、ゴールに吸い込まれていくシュートをダンクレーが手でブロック。明らかなハンドによってPKを与え、これで同点に追いつかれてドローに終わった。試合後、吉田孝行監督は厳しい表情を浮かべた。
 
「内容的に良くない試合だった。前半の最初は良かったけど、徐々に相手のペースになっていって、何度かカウンターを食らっていた。ハーフタイムには"緩すぎる"と指示を出したし"もっと気持ちを前に出しながら、自分たちに自信を持ってパスをつないで、正しい配置を取っていこう"と伝えたけど。最後に押し込まれた」
 
 絶対的な司令塔であるアンドレス・イニエスタを欠き、前節の湘南ベルマーレ戦から3-4-3布陣を採用。ボールを保持し続ける「バルセロナ化」を掲げ、クラブのベースである4バック布陣を「基本的には変えない」と言ってきた吉田監督にとって、これは理想を捨てた選択でもあった。

 攻撃時に手数を掛けずに最前線のウェリントンに長いボールを放り込むこともある戦術は、湘南相手に機能し、4-1で勝利し連敗を「7」でストップ。この磐田戦でも、パワーと高さを備えたブラジル人FWが攻撃の軸であり"ウェリントンありき"といっても過言ではなかった。先制点となるPKも、ウェリントンがポストプレーを受けようとした場面から生まれた。

 守備時には5バック気味になってブロックを敷くことで、最後をやらせないことで無失点を続けていた。だが、最終ラインが後ろに下がることで相手に押し込まれる時間が続き、終了間際に破綻。ビジャは「自分としては毎試合、主導権を握る試合をしたいと思っているが、今日はジュビロの方が良いサッカーをしていた。彼らが前進して、自分たちが後退してしまった」と振り返った。
 
 一時は公式戦9連敗という泥沼状態だったことから監督問題が浮上し、新監督にアーセン・ヴェンゲル氏を招聘する可能性が欧州メディアによって報じられた。だが、この日の試合後に吉田監督の支持を問われた三浦淳寛スポーツダイレクターは「もちろん」と明言。「(オファーが報じられている)新しい選手の名前も次々と出ているけど、自分たちの知らないこともあるし、すべてを鵜呑みにしないでください。(中断期間中に)ミニキャンプを張って、結束を高めたい」と続けた。
 
 この言葉が真実なら、中断期間後も吉田監督が指揮を執ることになり、ウェリントンを最前線に据えた現実的な戦い方を続けていく可能性が高い。ウェリントンが封じ込まれた時の手立ては――。この布陣の中で、離脱中のイニエスタとルーカス・ポドルスキをどこに当てはめていくのか――。理想を捨てた戦い方を実行しているなか、今後、白星を重ねていくためにクリアしなければいけない課題は多い。
 
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事