【松本】頼むぞ杉本太郎! “僕にしかできないプレー”をもっと見せてくれ!

2019年05月12日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「やりすぎて、悪いほうに転ばないように」

札幌戦で今季初先発を飾った杉本。随所に非凡なボールスキルを披露し、攻撃に絶妙なアクセントをもたらしていた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第11節]松本0-0札幌/5月12日/サンアル
 
 30分のことだ。ゴールキックで試合が再開されるまでのわずかな間、杉本太郎が前方にいるレアンドロ・ペレイラに何かを伝えている。L・ペレイラは「俺? 俺なのか?」といったジェスチャーで、杉本の言葉にはあまり納得がいっていない様子だった。
 
 直前のプレーで、前を向いてボールを持った杉本が縦パスを入れるも、これは札幌の守備陣にブロックされてしまう。L・ペレイラにも、シャドーでコンビを組む前田大然にも通すことができなかった。
 
「大然が裏を取るべき選手だと思うので、(L・ペレイラには)降りてきてほしい、と。でも、彼には彼なりの考えがあるはずで、そこはこれから話し合っていきたい」(杉本)
 
 件のシーンではチームメイトとの連係が上手く計れなかったが、それでもこの札幌戦での杉本のパフォーマンスは際立つものだった。
 
 狭いスペースに顔を出して味方からのパスを引き出せば、敵に寄せられても巧みな身体の使い方でキープし、確実にボールをつないでみせる。状況によっては、自らドリブルで運んで攻撃のスピードアップを図る。味方の攻撃参加を促す時間の作り方も上手い。これまではどこか一本調子だった松本の攻撃に、絶妙なアクセントをもたらしていた。
 
 もちろん、反省点はある。果敢に仕掛けて局面を打開する場面はあったが、「今日に関しては、奪われる回数が多かった。今のプレーを続けながら、失う回数をなくして、決定的な仕事ができればいい」と自らのプレーを振り返る。
 
 杉本のところで奪われて攻守が入れ替わり、攻め込まれることはたしかにあった。ただ、そうしたチャレンジなくして、チームとしての攻撃のグレードアップは実現しない。
 
「やりすぎて、悪いほうに転ばないようにしなければいけない」
 
 間違いなくJ1でも通用するテクニックと戦術眼の持ち主だが、それを独善的に見せびらかすつもりは一切ない。全体のバランスに気を配りながら、しかし"違い"を生み出すことも忘れてはいない。
 
「たぶん、僕にしかできないプレーがあると思う。そこは攻撃面で求められているところ。それをより多く出していきたい」
 
 今季は怪我で出遅れてしまい、ここまで途中出場が続いていたが、今節の札幌戦でようやくスタメンに抜擢された。73分に途中交代するまで、ゴールもアシストもなかったが、今後に期待を抱かせるには十二分の働きぶりだった。
 
 鹿島、徳島を経て、プロ6年目の今季、松本に新天地を求めた23歳のテクニシャンは、自身にとって3年ぶりとなるJ1の舞台で、勝負のシーズンを懸命に戦っている。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 
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