日々進化する湘南ベルマーレ。2位・名古屋との接戦で曺監督が得た教訓とは

2019年05月09日 隈元大吾

「リードしたあとに体重が後ろに行ってしまう」と指揮官は反省

10節の名古屋戦は山﨑(11番)のゴールで先制したものの、後半に追いつかれてドローに終わった。写真:滝川敏之

 出色の前半だった。湘南ベルマーレは前節の名古屋グランパス戦、松田天馬と齊藤未月のダブルボランチを中心に中盤の攻防で上回り、攻撃的なディフェンスから素早く転じて相手陣内へと展開した。先制機となった前半終了間際のPKも、右ウイングバックの岡本拓也が鋭い動き出しで前線を追い越し手にしたものだ。あらゆる局面で先手を奪うという、彼らの志向する戦いが淀みなく体現されていた。
 
 ひとつの契機は、8節・川崎フロンターレ戦に辿れた。リーグ覇者とのアウェーゲームに臨んだ湘南は、ワンタッチを織り交ぜ、スペースを突きながら小気味よく攻撃を加速させていく。勝点3を奪うべく相手を自分たちの土俵に引き込まんとした立ち上がりに、曺貴裁監督も「ゲームの入りは今までのJ1での戦いのなかで一番よかった」と目を細めたものだった。しかし、マイボールをスピーディに動かす一方で、球際や攻守の切り替えなど、彼らが脈々と培ってきた土台の部分には影が差した。自らのボールロストもあって徐々に主導権を譲り、結果0-2で敗れたのだった。
 
 以降、ルヴァンカップ横浜F・マリノス戦と9節・サガン鳥栖戦、そしてくだんの名古屋戦と、川崎戦の教訓はしかと活かされている。すなわち、自分たちのあるべきはそのままに、勝つための幅を広げるべく彼らは日々取り組んでいる。

 前節の名古屋戦はしかし、後半相手に押し込まれ、最終的に1-1で引き分けている。曺監督が振り返る。
 
「練習でやってきたことを出せば、誰が出てもあれぐらいの戦いは常にできるチームになってきたと思います。でもリードしたあとに体重が後ろに行ってしまう。特に後ろの選手が余って前に出てこられないところがある。いつも余っている状態だとペナルティエリアの中で跳ね返すしかなくなってしまうので、それは課題」
 
 指揮官が就任した2012年をふと思う。コンパクトフィールドをベースにハイプレスを仕掛け、開幕8勝1分とJ2でロケットスタートを切りながら、ラインコントロールの匙加減を見つめ直すと今度は極端にラインが下がってしまい、8戦勝ちなしに陥ったことがあった。たとえばそんなふうに、トライ&エラーを繰り返しながら、すべての経験を糧として湘南の今日はある。曺監督の指揮のもと、チームとしてやるべき軸を結果に揺るがず太くしてきたことは、昨季のルヴァンカップ初制覇が裏付けよう。前節の名古屋戦もまた、彼らの幅を豊かに育むひとつの契機となるに違いない。
 
取材・文●隈元大吾(フリーライター)
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