素人が仕切るマンUの強化部門…SD不在で大物代理人が頼みと前時代的だ

2019年05月08日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

プレミアリーグの多くで見られる前時代的なやり方。

マンUのウッドワード副会長は財務畑の出身で、サッカーは素人……。(C)Getty Images

 マンチェスター・Uの強化部門は、ライバルのマンチェスター・Cとは対照的に、典型的なイングランド・スタイル。といっても、サー・アレックス・ファーガソン元監督が「マネジャー」と呼ばれて強化の全権を握っていた時代のそれではなく、クラブの経営責任者が門外漢であるにもかかわらず強化の全権も抱え込んでいるという、近年プレミアリーグの少なくないクラブに見られるそれだ。
 
 マンチェスター・Uの場合、執行副会長のエド・ウッドワードがその立場にあり、経営戦略部門のトップに立つマシュー・ジャッジが契約交渉を行うという体制になっている。いずれも財務畑の出身でありサッカーは素人。それゆえ強化戦略は一貫したビジョンやポリシーを欠いており、その時々の事情に応じて監督の意見を聞いたりエージェントの売り込みに応じたりして、獲得するターゲットを決めるという前時代的なやり方だ。
 
 スカウティング部門に関しては、ユベントスで6年間に渡りチーフスカウトを務めたスペイン人のハビエル・リバルタを引き抜くなど、強化に取り組んでいた。しかし、昨夏にそのリバルタがたった在籍1年でゼニトのSDに転身し、優れたネットワークを取りこめなかったのは誤算だった。
 
 とはいえウッドワード副会長は、ミーノ・ライオラやジョルジュ・メンデスといった大物代理人たちと良好な関係を保っており、そのサポートや売り込みに支えられてそれなりのレベルを保っている。
 
 交渉力という点では、ブランド力と資金力が大きな武器。ポール・ポグバやアレクシス・サンチェスがそうだったように、ターゲットを絞ったら金に糸目をつけず好条件を提示して獲りにいく。
 
 チームマネジメント面では、チームや監督とトップの間を繋ぐSDが不在のため、チームの結束と安定にネガティブな影響を与えている。ジョゼ・モウリーニョ前監督とポグバの対立を、クラブが収束できなかったという事実は象徴的だ。
 
[マンチェスター・Uの強化部門&フロント採点]
●スカウティング:7.5点
●交渉力:8点
●チームマネジメント:6.5点
(すべて10点満点)
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※ワールドサッカーダイジェスト2019年5月16日号より転載。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にジョゼップ・グアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
 
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