「正直、やめようと思ったことも…」ガンバ愛に溢れる“不屈のCB”は、V字回復への救世主となれるか

2019年05月06日 竹島麻里子

韋駄天・永井を上回るトップスピードを記録!

FC東京が誇る強力アタッカー陣の前に敢然と立ち塞がった菅沼(左)。6試合ぶりのクリーンシート達成に貢献した。写真:徳原隆元

 いまだJ1リーグのホームゲームで未勝利、9試合・19失点と守備が崩壊し、降格圏近くに順位を落としている。そんなガンバ大阪が、今季無敗で首位を走るFC東京を迎えた第10節で意地を見せた。ディエゴ・オリヴェイラや永井謙佑、久保建英ら強力な攻撃陣を前に、大敗すら危惧された試合を見事無失点で凌ぎ切り、逆襲への狼煙を上げたのだ。
 
 ガンバにとって、今季のターニングポイントとなるであろうスコアレスドロー。その試合の守備陣の中心にいたのは、日本代表CBの三浦弦太ではなく、彼に代わって先発出場を果たした菅沼駿哉だった。
 
 菅沼は、ガンバのホームタウンである豊中市出身で、ジュニアユースチームから巣立った生え抜き。2009年にトップチームに昇格し、大型DFとして将来を嘱望されたが、熾烈な競争に苦しみ続けた。11年夏に当時J2のロアッソ熊本に期限付き移籍すると、その後12年にジュビロ磐田に活躍の場を移し、翌13年には完全移籍。以後、京都サンガ、モンテディオ山形と渡り歩いた。そして昨年春、6年半ぶりに古巣復帰を遂げたのだ。
 
 菅沼は、ひとつのエピソードを紐解いてくれた。
 
「ジュビロ時代でした。当時の監督で、今季からガンバU-23チームで指揮を執る森下仁志さんに、『お前の目標はなんや?』と訊かれて、『ガンバに戻ることです』と答えました。すると仁志さんは、『そしたらもう一回ガンバに呼んでもらえるように頑張ろうか』と言ってくれ、熱く指導をしていただきました。そして今季、開幕前になってもトップチームに入れなかった自分は、U-23で仁志さんにふたたび2週間の指導を受けました。そのとき、仁志さんに言われたんです。『現状に満足するな。試合に出ろ。ここのふたりのセンターバック(日本代表の三浦と韓国代表のキム・ヨングォン)に勝つにはなにをしたらいいのか、自分の良さを出すためになにをしたらいいのかを考えて取り組め』と。そう言われて、ガンバに戻ってこられたことだけで満足している自分に気づいて、やらなアカン、と強く思いました」

 
 かくして重要なFC東京戦で先発出場のチャンスを得た。菅沼は絶えず身体を張り、自慢のスピードを武器に奮闘した。
 
 宮本恒靖監督は「相手のカウンターに対応し、身体を張っていた。ラインコントロールも徐々に良くなった」と評価。菅沼は「永井君とはロンドン・オリンピック代表の候補合宿で一緒にやってて、自分の中ではラインを上げながらもスピードで勝負したいと思っていた。ゼロで抑えられたのは自信になる」と語った。事実、菅沼は、この試合でチーム1のトップスピード(時速32.3キロ)を記録し、永井のそれ(時速30.9キロ)をも上回った。

【G大阪 0-0 FC東京 PHOTO】勝利が遠いG大阪。それでもFC東京の猛攻を防ぎ切り引き分けに持ち込む

次ページ「僕の心の中にはいつも“ガンバ大阪”があった」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事