突然、口にした“引退予告”――小野伸二の「その時」はいつになる?

2019年05月02日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

サッカーを続けられる環境がある限りは――

現役にこだわっているわけではないが、まだまだスパイクを脱ぐつもりはない。理由はシンプル。「サッカーをやっていたい」からだ。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 1979年生まれの小野伸二は、今年9月には40歳の大台に乗る。もっとも、柔和な笑顔を浮かべれば少年のような面影を残す男は、今季の開幕前には「40歳とは思えないプレーを見せたい」と強い意気込みを口にしていた。
 
 ベテランと呼ばれる年齢になっても、観客を魅了するテクニックはいまだ錆びついていない。ただ、数多の修羅場を潜り抜け、その経験を持って"味のある"プレーを見せる小野のような選手も少なくなってきた。
 
 昨季に限れば、小笠原満男、中澤佑二、川口能活、楢﨑正剛といった、日本代表でもともに戦ってきた名手たちが現役に別れを告げた。
 
「同級生も含め、けっこうな数の選手が引退しましたよね。一緒にやってきた時代が長いだけに寂しさはあるし、日本サッカー界にとっても、それは同じだと思います」
 
 戦友たちの想いを推し量り、小野はそこに自分の心情を重ねてみる。
 
「きっと、まだまだできる選手が多かっただろうけど、それでも引退という決断をするのは、大変なこと。自分が同じ境遇で、その決断を下せるかといえば、今は無理だと思う。みんな引退した後のこととか、考えたりしていたんですかね」
 
 小野にもいずれ"その時"が訪れる。それは本人も承知しているが「サッカーを続けられる環境がある限りは、続けたい。簡単なことじゃないけど、まだ引退の決断はしたくない」。
 
 ただ、現役にこだわっているわけでもない。スパイクを脱ごうとしないのは、実にシンプル。「サッカーをやっていたい」からだ。
 
「サッカーをしていない自分を想像できないので。それが想像できるようになったら辞めます(笑)」
 
 突然、口にした"引退予告"だが、当分は先のことになりそうだ。「現段階では、まったくないですけどね」と、小野はきっぱりと言った。
 
 所属する札幌では今季で在籍6年目を数える。これは小野のキャリアの中では浦和と並ぶ最多の数字であり、日本の最北端に位置するこのクラブには、特別な愛着があるはずだ。
 
「とにかく、チームの力になりたい。北海道コンサドーレ札幌というクラブが長くJ1にいられるように。ミシャさん(ペトロヴィッチ監督)が来てくれてサッカーも変わりました。あとはしっかりと、J1に定着するためのチーム作りをしていく。そうあるべきだと考えています」
 
 誰もが認める高次元のスキルと、予測不能なイマジネーションで織りなすファンタスティックなプレーを、もっともっと見ていたい。
 
※本記事は、サッカーダイジェスト5月9日号(4月25日発売)掲載の記事から一部抜粋・加筆修正したもの。
 
取材・構成●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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