【松本】ウノゼロ勝利も展開は「一か八か」。ここ3戦で勝点7の順風だからこそ突き詰めるべき課題

2019年04月22日 大枝 令

インテンシティの高いスタイルで、気温が上がってくれば消耗がさらに激しくなり…

8節終了時で、勝点11で10位につける松本。ここ3試合は2勝1分けと好調を維持する。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ8節]松本1-0鳥栖/4月20日/サンアル
 
 松本がじわりと勝点を伸ばしている。6節は神戸を相手に2-1で逃げ切ると、続く7節は湘南に追い付いてドロー。そして鳥栖を迎えた今節は、若きスプリントキング・前田大然のJ1初得点が決勝点となって「ウノゼロ」で白星をもぎ取った。

 
 だが試合後のミックスゾーンで、選手たちは一様に課題を口にしていた。ディフェンスの要・飯田真輝は言う。
「ポゼッションでいえば50対50くらいのゲームをしたかった。結局きょうはカウンターで取っただけ」
 
 前田とともに2シャドーを形成する中美慶哉もこう口にする。
「どこかでボールを落ち着かせたりできればよかった。ただ押し込まれるだけ、ただ前に蹴るだけじゃなくて、ちょっとひとつ繋いで中継できれば全然違ってくると思う」
 
 ボールを奪う位置が低く、奪った後になかなかパスを繋げない。即時奪回に遭って再びディフェンスに回らざるを得ない。この試合も結果的に左右から矢継ぎ早に入れられたクロスで失点しなかったから良かったものの、1回でも決められていたら途端に反撃の芽はなく、瓦解しても不思議ではない状況。極端に言えば「一か八か」のような展開だった。
 
 そもそもシステム上のミスマッチもあり、4バックの相手に比較的自由にクロスを入れられるのはやむを得ない側面もある。中で跳ね返すと割り切っているから、それ自体は松本のディフェンスの秩序の範疇。ただ、跳ね返したり奪ったりした後のボールをどう処理するのか。これは何も今に始まったものではなく、3連敗していた第3~5節も、さらに言えばもっと以前から孕んでいた課題。闇雲なクリアを拾われてサンドバッグ状態になれば、膝を折る時が来てもおかしくはない。
 
 そうならないためにどうするか。橋内優也は今のタイミングを好機と捉え、次のステップに目を向けることを考えている。「勝つことで明るく前向きにトレーニングができているので、こういうことを言えるチャンス。負けている時とか勝てていない時に言えないのはダメだけど、今は言いやすい環境にある」と言い、「ボールを取る位置が悪くなった時にビルドアップを開始するというのではなくて、したいはしたいけど、現状を考えると今はクリアが精一杯。そこをもう1個どこにつなげるのか。その意識が強くなりすぎるとまた悪循環になるので、そうじゃなくて、つなぐかの判断は本人次第だけど、周りの選手がポジションを取って選択肢を与えることが大事。判断をどんどん変えていかないと」と主張する。
 
 奪取後のボールを、どんな判断に基づいてどう扱うのか。そこを突き詰めることで、松本は劇的に進化できるだけの潜在能力を秘めている。もし落ち着かせることができれば、プレスに奔走した前線には一息つく猶予が生まれ、攻撃にエネルギーを割ける。前田らが一気に裏を取ってカウンターの脅威を植え付けておけば、相手も前がかりになるのを躊躇するかもしれない。
 
 そもそもインテンシティの高いスタイルで、気温が上がってくれば消耗がさらに激しくなるのは明白。そうした状況でスペースだけでなくボールをも掌握する時間が少しでも増えれば、90分プラスアルファを走破して勝点を積める可能性も高まるだろう。
 
取材・文●大枝 令(スポーツライター)
 

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