異色キャリアのGMが語る“リアル”南葛SCの舞台裏 Vol.1――選手の獲得オファーも独特な視点で

2019年04月23日 長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)

元サッカー誌編集長などを経て『キャプテン翼』のライツ事業に従事

南葛SCのゼネラルマネージャーを務める岩本氏。昨年2月よりチームに関わることになった。写真:田中研治

 漫画『キャプテン翼』の原作者、高橋陽一氏を代表とする「南葛SC」の2019年シーズンが始まった。開幕戦を引き分けとしたチームは、続く2節で今季初勝利を挙げると、3節も6ゴールを挙げる爆発ぶり。上々の滑り出しを見せている。
 
 昨季惜しくも関東リーグへの昇格を逃しているだけに、クラブが今季にかける意気込みは相当なものだ。開幕前には元日本代表の福西崇史氏を監督に据え、元鹿島アントラーズの青木剛、佐々木竜太などを補強。東京都リーグ1部では屈指の戦力を揃えた。
 
 クラブの強化を担うゼネラルマネージャーを務めるのは、『キャプテン翼』に関するライツ事業を手掛ける株式会社TSUBASAの代表取締役、岩本義弘氏だ。その経歴はサッカークラブのGMとしては異色なものだ。週刊誌編集者を経て、株式会社フロムワンで『サッカーキング』『ワールドサッカーキング』など各媒体の編集長を歴任。代表取締役まで務めた同社を2016年2月に退任して、親交のあった高橋氏をサポートするべくTSUBASAを立ち上げた。そして、2018年2月からは南葛SCのGM職に就いたのである。
 
 そのキャリアの中でマルチな才能を発揮してきた岩本氏だが、果たしてこの1年で南葛SCにどのように携わって来たのか。GM就任の経緯からチーム作りの舞台裏について話を伺った。
 
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「まず、なんで僕が南葛SCに携わるようになったかというと、クラブが(南葛SCとなってから)これまでのシーズンでけっこう足踏みをしてきたからなんです。東京都の3部から2部に上がる時と、2部から1部に上がる時。一昨年は高橋先生とほとんどの試合を一緒に見ました。東京都の2部って、他の地域と比べてもけっこうレベルが高くて。ただ、チームはまだまだアマチュアのサッカーで、先生とは、『これで関東1部やJFLに行くのはすごく時間が掛かりますよね』って話をしていたんです」
 
 南葛SCを外部から見ていた当時をそう振り返る岩本氏。2部リーグに在籍していた2016年には、終盤戦でライバルだった三菱商事との直接対決で敗れ、惜しくも1部リーグ昇格を逃すシーンを目の当たりにした。
 
「その試合は、はっきり言ってアンラッキー。誤審もあってという形で負けたんですが、とはいえ、これって勝ったり負けたりであとは運だから、それは下のカテゴリーでも足踏みをしますよね、という話をして。それで先生がまずは自分のツテを頼りに、ブラジル人をふたり入れたんですよね。それでだいぶ強化もされて2017年に1部昇格を決めたんですが、1部に上がったらまた相当レベルが上がるじゃないですか」
 
 前職時代に『キャプテン翼』のライツ事業の手伝いをようになって以来、ともに歩んできた高橋氏から直接、「南葛SCも一緒にやりませんか」とGM就任の打診があったのは2017年シーズンが終わった後のことだった。
 
「先生にどこまでやりたいのかと一度伺った時に、J1を目標に最終的にはアジアや世界に出て行けるようなチームにしたいというところまで思われていた。だったら、これはけっこう本腰を入れないと、時間ばかり掛かってしまう。特に東京や関東を勝ち抜くのは厳しい。僕も20年以上サッカーの取材をしながらいろんなチームを見ましたが、やっぱり上がるチームはギアの入れ方が相当違いますからね」
 
 高橋氏の熱い想いを汲み、GMとして南葛SCの強化を担うことになったわけだが、その職務内容はいわゆるサッカー面のチーム強化だけにとどまらない。地域リーグならではの悩みや問題なども当然のように浮かび上がってくるのだった。
 

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