愛媛FCが描くクラブと四国の未来。プレミアリーグにいる重要性を強化・育成担当が力説

2019年04月19日 江刺伯洋

「今日も小中学生がいっぱい見に来てくれた。するとこれが彼らの基準になる」

7年ぶりのプレミアリーグに復帰した愛媛U-18。高校年代最高峰の舞台は、彼らに計り知れない財産をもたらしている。写真提供:愛媛FC

 愛媛U-18が7年振りに高校年代最高のステージに復帰した。
 
 高円宮杯プレミアリーグ2019。2012年以来の最高峰への再チャレンジだ。開幕戦で優勝候補の名古屋グランパスU-18を2-0で下しただけにホーム開幕戦もと期待が高まったがガンバ大阪ユースに1-2で敗戦した。
 
「(このリーグは)ちょっとしたミスが結果につながる」と試合後に青野大介監督は唇を噛んだ。トップチームに2種登録された経験があるGK草野真人(3年)もMF三原秀真(3年)も「四国プリンスリーグとは全く違うレベル。でもここでやれないとプロに成れない」と口を揃えた。
 
 同日トップチームの四国ダービー(アウェー)があったにもかかわらず約300人が観戦に訪れ注目の高さがうかがえた。
 
 今の3年生は偶然強くなったわけではない。2017年に開催された愛媛国体のターゲットエイジとして少年期から海外遠征などを行ない、長い時間をかけて愛媛県全体で強化してきた。
 
 この世代に合わせ、クラブも4月からユース選手寮を新設し、練習後のケータリングを常備するなど「育成が評価されればチームの価値をあげてくれる」(児玉雄一強化部長)とこれまでにない程力を入れている。

 雨が桜の花びらを落とすなか試合が始まった。
 ガンバユースはU-23登録の選手など超高校級を何人も擁し、ユニホーム以上の威圧感があった。
 
 それでも開始早々は左ウィングバックの三原が挨拶代わりの鋭いドリブルで敵陣を二度切り裂きジャブを打つ。しかし、速くて強くて大きい相手のハイプレスを受けると愛媛はバックパスを連発。GK草野が苦し紛れに最前線へ蹴り出すと、そこには四国で見たことのない190センチ近いセンターバックが待ち構えていた。
 
 先制は愛媛だった。36分三原のドリブルから素早いクロスを相手GKの前に供給。詰めていたFW上岡陸(3年)が跳ね返りを押し込んだ。
 
「特に前半は後ろ重心で消極的だった」と感じていた監督がハーフタイムで修正を促すと持ち味の繋ぐパスサッカーが出始める。しかし「今まで経験したことの無いプレッシャー」(青野監督)に再び翻弄され始めると相手ペースに。77分と78分に立て続けに決められ逆転を許すともう愛媛に反撃の余力はなかった。
 
「結果よりこの中でどれだけ成長できるかが大事」
 
 選手はうなだれていたが指揮官は目先の勝敗だけにこだわるつもりはない。「ただトップに上がる選手を出し続けるためにもここに居続けないといけない」とこのリーグに復帰した重要性も把握している。
 
 帰り際、この再チャレンジの意義を一人思案していると育成担当アカデミー部・和泉茂徳ヘッドオブコーチングに声を掛けられた。
 
「今日も小中学生がいっぱい見に来てくれた。するとこれが彼らの基準になる。そこが上がれば元気のない高校サッカーとか愛媛全体にも良い影響が出る。直ぐではないけど5年後10年後に……うちだけじゃなくて愛媛や四国のためにもこのリーグにいる意義は大きいんです」
 
 育成は焦らず慌てずじっくりと。プレミアリーグは12月まで続く。
 
取材・文●江刺伯洋(南海放送アナウンサー)
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