鹿島から世界へ――赤丸急上昇のSB安西幸輝を変えた森保ジャパンでの10日間

2019年04月08日 一色伸裕

「今日は篤人くんもいなかった。こういう時は、自分がまとめないといけない」

G・シャビエルをケアしつつ、効果的な攻撃参加を見せた安西。森保A代表監督へも好アピールになったことだろう。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 劣勢を挽回し、2-1で逆転勝利。アジア王者が本領を発揮し、リーグ屈指の攻撃力を誇る首位・名古屋グランパスを撃破した。
 
「(先制は許したが)結果、勝てたのでよかった。今日の名古屋、次のFC東京と上位に勝っていくことが大事」。日本代表DF安西幸輝は確かな手応えを感じ、安堵の表情を浮かべた。
 
 今季、リーグ最多13得点(5節終了時)の攻撃力を誇る名古屋。昨季の得点王ジョーが絶対的なエースだが、そのジョーの影に名古屋の攻撃を司るもうひとりのエース、ガブリエル・シャビエルがいる。この試合、安西はG・シャビエルを封じ、相手の攻撃力を抑える責務を担った。
 
 前節のコンサドーレ札幌戦(3月30日)で6本のシュートを放ち、2得点を挙げた名古屋のキーマン。対峙した安西は、「シャビエルが攻め残っていたので、攻め上がるのが大変だった。機を見て上がらなければいけなかった」と振り返ったように、持ち味の『攻』を抑え、『守』に力を注いだ。
 
 G・シャビエルがボールを持てば、すぐに間合いを詰めて対応。激しいプレスで身体を寄せて、自由を奪った。チームは47分に同選手に先制点を奪われたが、GKクォン・スンテのミスによるもの。安西自身は、責務を全うし「やられた感じはなかった」と"完封"に手応えを感じた。

 3月の日本代表戦2試合の経験が、糧となっている。コロンビア戦(22日)の89分から出場してA代表デビューを飾ると、ボリビア戦(26日)では先発出場で73分間のプレー。世界のレベルを肌で感じ、「スピードが違う。もっとやらないといけない。特に守備での対人は頭を使ってやる必要がある」と成長を誓っていた。
 
 名古屋戦は、日本代表の森保一監督がスタンドで視察。"御前試合"での自身のプレーを振り返り、「もう少し自分を出していきたかったけど、チームが勝つことが大事だった。(守備のバランスもあったので)攻め上がるのを我慢した」と話したように、献身的な守備でアピール。常に相手の動きを先読みし、G・シャビエルを無力化した。
 
「抑えていた」という攻撃でも、22分に左クロスからセルジーニョの決定機を演出し、自らも2本のシュートを放ち得点を狙うなど、"さすが"の攻撃力を見せた。特に安部裕葵と連動した左サイドの突破はキレ味鋭く、名古屋の脅威となり続けた。
 
 この試合、主将DF内田篤人が負傷により欠場。守備力低下が危惧されていたが、成長著しい安西がその不安を一掃。「今日は篤人くんもいなかった。こういう時は、自分が(最終ラインを)まとめないといけないと思っている」と頼もしさを示した。
 
 わずか10日間の日本代表での活動。それでも安西にとっては「継続して代表に入れるように、鹿島でも頑張らないといけない」とサッカーへの取り組む姿勢を変えさせるほどの刺激になった。その経験が心身両面で好影響を与えており、急速な成長につながっている。鹿島の安西、日本代表の安西は、赤丸急上昇中のSB。目が離せない。
 
取材・文●一色伸裕(産経新聞社サンケイスポーツ)
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