【三浦泰年の情熱地泰】僕が日本代表の親善試合よりも音楽ライヴに“文化”を感じたワケ

2019年03月25日 サッカーダイジェストWeb編集部

日本サッカーは文化となっているか? いや、なっていない。

日本は22日、コロンビアとW杯以来となる対戦で0-1の敗戦。しかし三浦氏はその頃……。(C) SOCCER DIGEST

「イチロー君が引退した」
「カズが2年ぶりに先発出場した」
 
 僕は1999年から3年間お世話になったアビスパ福岡と、2011年と12年にお世話になったギラヴァンツ北九州を訪れていた。そんな想い出の地でふたつのニュースを聞いた。
 
 一方、日本代表がコロンビアを相手に敗戦を喫していた頃、僕は北九州で大好きなあるアーティストのライヴを楽しんでいた。
 
 本来なら日本代表戦を監督目線で分析・確認しなければいけないのであろうが、監督を休業している間でなければ行けるはずのないタイミング。そんなライヴは最高の時間となった。学ぶことも多く、サッカー界にも通ずるものを感じとれた。
 
 日本の力が試される大事な試合の日に足を運んだライヴから感じとったものとは、サッカー観戦とはまた比べることができない感動とパワーだ。
 
 歌うことの楽しさ、素晴らしさを小さな身体をいっぱいに使って表現する。歌唱力は当然のこと、エンターテイナーとしてプロアスリートと近い迫力を感じた。それは後日、目の前に映る代表戦とは種類の異なる、「凄さ」なのだ。
 
 国内の親善試合は決して凄い試合ではない。ワールドカップ本番のような必死さを求めるのは酷だろうし、上手いとか、これで良いというレベルとは違い過ぎる。サッカー好きは音楽と比較するなと言うかもしれないが、それが僕の正直な気持ちだ。
 
 ライヴで発せられるエネルギーは究極だ。きっとそれが芸術であり、文化なのであろう。
 
 翌日、僕は福岡空港に向かう前の時間を使って福岡ビルで行なわれた「文化を知る」という講演を聞きに行った。
 
 福岡と東京を比較してみよう。何に対しても東京が勝るのかもしれない。そんな福岡にFACT(ファクト)という団体が文化交流会を開いていた。
 
「福岡Fukuoka アートArt カルチャーCalture トークTalk」と題されたイベントは、歴史、芸術文化をもっと広く、深く、身近に感じてほしいと、いろんな分野のゲストを招きトークショーを行なう。2日間に分けて5種のキックオフトークを行なった。
 
 僕は2日目の3つの講演を聞かせてもらったが、刺激を受けると同時に、自分自身の足りなさを痛感した。
 
 日本代表対コロンビア代表の試合を生で見ずに、コンサートライヴを見た瞬間に感じた、「これを見て良かった」と思う気持ちと同じだ。
 
 陶芸家や研究家、表現者や愛好家。街おこしに貢献する地元企業や実業家の人など数多くの人たちが関わり、「文化を知る」という共通のテーマで行なわれた企画。
 
 今、僕が感じている「日伯、日本とブラジルを繋げる文化交流」というテーマにも共通する部分があると感じている。
 
 アーティストが必死にスマイルを送るライヴ。自分の信念に基づいてやりたいこと、やっていることを必死に伝える講演会。もちろん野球、サッカーは必死にプレーすることで表現する。
 
 これこそが文化なのである。
 
 Jリーグ元年には、海外から数多くのスター選手がやって来て、ブラジルからはジーコやビスマルクが、そして時が経ちドゥンガやセザール・サンパイオが、さらにベベットやエジムンド、レオナルド、ジョルジーニョと代表クラスの選手がJリーグでプレーした。
 
 もちろん、これも日伯文化交流であろう。
 
 ただ日本ではまだスポーツと文化は交わりあっていない。なぜ、音楽ライヴを鑑賞して芸術を感じるのか? それは音楽が文化として認められているからだ。
 
 スポーツで言えば、日本ではアマチュア文化は発展しているが、プロスポーツ文化はまだまだ理解できている人間が少ないのでは……。ブラジルはサッカー文化が根付いている。日本サッカーは文化となっているか? いや、なっていない。
 
 では文化とは何か?
 
 僕はよく言うが、文化とは好きの度合いだ。まだまだプロスポーツを愛する人は日本では少ないのかもしれない……。
 

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