わずか1か月でJ1横浜へキャリアアップ!スペイン修行も経験した23歳の"応援せずにはいられない"輝き

2019年03月25日 松澤明美

大学を中退後の2015年にスペインへ「サッカーの価値観というか、考えも変わった」

わずか1か月でステップアップを果たした中川。タレントが揃う横浜でも力を発揮できるか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 その知らせは電撃的だった。3月15日、横浜F・マリノスがFC琉球からMF中川風希の獲得を発表。J2は2月24日に開幕したばかりで、昇格組の琉球は3戦3勝と勢いに乗っている最中のJ1への加入だ。J2でのプレー期間は1か月に満たないうちのキャリアップ。驚きは隠せないものの、中川はこれまでも挑戦を選択してきた。不屈の魂でつかんだ彼らしい朗報だろう。
 
 埼玉県さいたま市出身の中川は県内の名門・武南高を卒業後、関東大学サッカーリーグ2部に所属する関東学院大に進学した。中川はここでチャレンジを選ぶ。大学を中退後の2015年、スペインへ渡ったのだ。バジェカス(5部)、サン・イシドロ(4部)でプレー。「いろいろと学ぶことが多かった。サッカーの価値観というか、考えも変わった。大きい経験」と礎を築いた。
 
 その後、2017年8月9日に当時J3のFC琉球へ加わり、10日後の19日には福島ユナイテッドFC戦でリーグデビュー。チームは勝利を飾り、中川にとっては初白星となった。2018年は16ゴール・10アシストを記録して琉球のJ3初制覇に大きく貢献。J2の今季も開幕から快進撃を続けるチームの中心だった。

 3月2日には地元・埼玉への凱旋も果たした。高校生以来となるNACK5スタジアム大宮のピッチに立ち、2シーズン前までJ1にいた大宮アルディージャと対戦。ドリブルで果敢に仕掛け、質の高いパスを何度も配給。堂々の3アシストをマークし、チームに4−3での勝星をもたらした。そして、試合後には琉球加入当時を振り返っていた。
 
「先のことは何も考えていなかった。とりあえず琉球に練習参加してみようって。もしかしたら琉球に入れてなかったら(サッカーを)やめていた。(金鍾成)前監督にはすごく感謝しています。自分が成長した姿を(地元で)見せたいとずっと思っていたので、ちょっとは見せられたかなと思います」
 
 観戦に駆けつけた武南高時代のチームメートでJFLの東京武蔵野シティフットボールクラブに所属する鈴木裕也は同級生の活躍を目にし、「海外から普通だとここまで上がってくることはほとんどない。それだけ努力したのかな」と感嘆の声。「あきらめないで、そこまでやり続けられてすごい」と自身の励みとした。
 
 今度はトリコロールのユニホームに袖を通す。横浜は実力者がそろい、激しいポジション争いが待ち受ける。だが、きっと勝ち抜き、ピッチを駆け回る姿が見られるはずだ。かつての仲間も敬意を表す不屈の魂があれば、どこにいっても大丈夫。未知に飛び込む勇気を持った23歳は、応援せずにはいられない輝きを放っている。
 
取材・文●松澤明美(サッカーライター)
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