【栃木】黒星先行でも「ネガティブな感情にとらわれるな」新主将・藤原広太朗が得た前進の手応え

2019年03月18日 桜井 誠

「チームとして、やろうとしていることは表現できつつある」

新加入ながら主将を務める藤原広太朗(4番)は、上手くチームをまとめ上げている。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 今シーズンもクラブは序盤から試練を迎えている。4節を終えて、1勝1分2敗の15位と、スタートダッシュに失敗した昨シーズン同様下位にあえぐ。しかし選手たちに悲壮感はない。新たに就任した田坂和昭監督の明快なキャラクターによるところも大きいが、同時に移籍1年目の新主将が選手たちを上手く組織としてまとめ上げている。
 
「チームとして、やろうとしていることは表現できつつある」。そう話し、しっかりと前を向くのは新主将の藤原広太朗だ。昨シーズンのレギュラー3バックが丸々流出したチームにあって、センターバックとして守備ラインを任された28歳。Jリーグ通算200試合出場が目前に迫るなか、6シーズンを過ごした徳島から新天地にやってきた。
 
「熱いサポーターがいて、栃木はアウェーで来た時に戦いにくかった印象がある。それが今度はホームになる。楽しみです」
 
 1月の入団会見でのコメントは短く、オーソドックスなもので、「新戦力のなかのひとり」という以上に、取り立てて特別な光は放っていなかった。
 
 しかし宮崎キャンプなどを経て、チームの中で存在感、信頼感を高めていくと、5シーズン務めた廣瀬浩二に代わって主将を任された。立命館大時代以来の主将抜擢で、本人曰く「言うべきことは、年上の選手にも言えるタイプ」だという。栃木のような地方のクラブでは、「顔」となる選手は多くはないため、主将が選手たちを代表して取材対応に当たることが少なくない。チームに結果が出ていないこの時期はなおのことで、藤原がほぼ毎回、その責務を果たしている。

 2節、アウェー水戸戦で0-3の敗戦を喫した翌日、藤原を中心に選手たちで自発的にミーティングを開いた。「ミスは誰にでもあるもの。それをいかにチームで共有し合い、カバーするかが大切。ネガティブな感情にとらわれずにやっていこう」。そんな言葉をチームメートたちに掛けたという。続く3節は横浜FCに試合終了間際に勝ち越しゴールを奪われ、土壇場で勝点がこぼれ落ちた。しかし水戸戦後のミーティングの効果は確実に出ているようで、「横浜FC戦ではしっかり人にいくことができていた。チームとして切り替えられている」との感触を持っている。
 
 一方、ピッチの上でも堅守のキーマンとしての重責も背負う。昨シーズンほどの上背はない3バック。田坂監督の「守備は昨シーズンとは違う形で構築しないといけない。以前のような高さがない以上、機動力で勝負をする」というコンセプトで進化を図っている。もちろん相手の攻撃を硬軟織り交ぜて弾き返す堅守は、守備陣の踏ん張りだけでは完成しない。当然、そこは本人も強く自覚をするところで、「前線の選手を信じ、全員で点を取り、全員で守る。11人が同じ意識を持ってプレーすることが大切」と言い切る。
 
 開幕4試合を終え、チームは下位からの反転攻勢を狙う。「まずは自分に厳しく、自分らしいプレーをするだけ」と藤原。守備のスペシャリストとして培ってきたそのマインドは、この栃木でも徐々にチームに浸透し始めており、同時に上位進出へは欠かせない重要なエッセンスとなりつつある。
 
取材・文●桜井 誠(下野新聞社)
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