16年の現役生活に幕… 渡邉大剛の選手生命を伸ばしたのはサイドアタッカーからの転換だった

2019年03月17日 郡司 聡

トライアウトを受けるも納得のいくオファーは届かず…

16年間の現役生活にピリオドを打った渡邉大剛。昨季終了後に、トライアウトを受けるなど現役続行への道を模索したが、納得できるオファーは届かなかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 2018年11月17日。J2最終節のその日、渡邉大剛はPikaraスタジアムのピッチでボールを追いかけていた。18シーズン最後の試合は、カマタマーレ讃岐へ移籍後、初めて両親が讃岐の試合をスタンドで観戦。対戦相手はプロのキャリアをスタートさせた京都サンガF.C.だった。どこか運命めいた一戦でピッチを駆け回った渡邉の脳裏に、ある予感がよぎった。
 
「もしかしたら、この試合が現役最後の試合になるかもしれないな」
 
 18シーズンを終えると、所属する讃岐はJ2最下位でJ3降格が決まった。渡邉は讃岐から契約満了の通達を受け、約2年半在籍したチームを退団。現役続行にこだわり、12月のトライアウトを受けるため、讃岐に残って若手選手との自主トレに混じりながら、コンディションを維持しようと努めた。
 
 そして12月11日、フクダ電子アリーナでのトライアウトを受け、他クラブからのオファーを待った。しかし、12月末を過ぎ、年明けを迎えても、自分自身の中で納得がいくオファーが届かない。
 
 いつでも新チームに合流できるように体は動かしていたが、このまま納得のいくオファーがなければ、決断を迫られる可能性もある。気持ちの整理もつけながらオファーを待ち、年明けに讃岐でチームメートだった田中英雄と会う機会があった。
 
 お互いの近況を報告する中で、田中の下には関西リーグに所属するFCティアモ枚方から話があることを聞いた。「大剛はどうなの?」。そう田中に聞かれると、「僕はもしかしたら、このまま引退するかもしれません」と告げた。
 
 その日から1週間後、渡邉は田中から「最終的にティアモに決まった」との報告を受けた。その時だった。
 
「英雄さん、僕は現役を引退することにします」
 
 プロ生活16年の現役生活に幕を閉じることを決断した。
 
 国内のJリーグで現役続行が難しければ、選択肢の一つとして、海外リーグでのプレーも頭に浮かんだ。実際にキャンプ地で訪れたこともあるタイでプレーするのも悪くはないとも思った。しかし、日本を離れ、韓国で約半年間プレーしていた折に、愛犬二匹と離れて暮らしていた"喪失感"にも似た感覚を思うと、自然と海外リーグでプレーする選択肢はなくなっていた。
 
 こうして2月18日。最後の所属先となった讃岐から、「渡邉大剛 現役引退」のリリースが発信された。
 

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