【横浜】失点を招いたGK飯倉大樹のハイリスクな縦パス。だがそこにはある狙いが――

2019年03月13日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「あそこを使わないと、優位性は生まれない」

川崎戦は2失点の飯倉。だが、家長との1対1のピンチをストップするなど、いくつかのビッグセーブで勝点1奪取に貢献した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第3節]横浜2-2川崎/3月10日/日産
 
「キー坊(喜田拓也)と話したんだけど、相手が来ているから、俺はキー坊の左足に出して。キー坊も分かっていたんだけど、ピッチもスリッピーだったし、ボールが伸びちゃったっていう。お互いにどっちのミスでもないと思うし。意志疎通はできているから」
 
 横浜のGK飯倉大樹が振り返るのは、開始4分の失点の場面についてだ。飯倉がアンカーの喜田に縦パスをつけようとする。だが、このボールはわずかの差で喜田の足もとには届かず、川崎のボランチ田中碧に拾われる。そして田中はすかさず前方にいるレアンドロ・ダミアンにスルーパス。これを受けた元セレソンFWは、前に出てきた飯倉の頭上を抜く鮮やかなチップキックでゴールネットを揺らした。
 
 ビルドアップの乱れを突かれた失点だった。映像を見返せば、たしかに飯倉の言うとおり、ボールが予想以上に伸びてしまい、受け手の喜田もトラップできなかった。
 
 最後尾から丁寧にボールをつなげるスタイルの横浜に対し、川崎は高い位置からハメにきていた。飯倉の不用意なパス。そんな見方もできるかもしれない。
 
 ただ、飯倉がパスを出した瞬間、センターサークル付近のエリアに注目してほしい。川崎側は横浜のビルドアップを狙っている。当然、守備が前がかりになる。カットしたのは田中だが、もう一方のボランチ守田英正も喜田を狙ってダッシュ。結果、ピッチ中央にはスペースが生まれる。中に絞っている横浜の右SB(このポジショニングも横浜の特長だ)広瀬陸斗や、左インサイドハーフの天野純はフリーの状態だった。
 
 縦パスを受けた喜田がそのまま前を向く、あるいは近くにいる選手に預けてもいい。そこから素早く広瀬や天野につけられれば、一気に中央から崩せる。
 
"不用意"に見える飯倉の縦パスには、そんな狙いが込められているのだろう。トリコロールの守護神は「自分たちのサッカーをするには、あそこ(アンカー)を使わないと、絶対に優位性は生まれない」と断言する。
 
 リスクの伴う戦術ではある。川崎戦を見るまでもなく、ひとつのミスが失点に直結する確率は高い。だが、飯倉が怖気づいて安易にロングボールを選択すれば、喜田が相手のプレスを嫌がってパスを受ける準備を放棄すれば、横浜が目指すアタッキング・フットボールは成立しないだろう。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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